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資源・温泉[5] 神岡鉱山
~宇宙をにらむ鉱山~

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【豆知識】

種類は豊富だが産出量が少ないことを特徴とする日本の金属資源は,採掘してもほとんど経済的に採算が合わない.そうしたなかで,すでに8世紀初期には金の産出があったとされているほど歴史のある神岡鉱山も2001年6月でついに閉山された.しばらくの間,国内唯一の金属鉱山という,有難いような有難くないような呼称が続いたが,他に譲ることのないままこの呼称は日本から消えてしまった.
神岡鉱山におけるおもな鉱床は,石灰質岩石を交代してできるスカルン型鉱床と呼ばれるタイプの鉱床である.飛騨片麻岩類の中にある結晶質石灰岩に花崗岩質マグマが貫入し,そのマグマが運んできた鉱液中の金属と石灰岩 (CaCO3) のCaが交代したり,それに付加したりしてできたものである.閃亜鉛鉱や方鉛鉱といった鉱物 (鉱石) が形成され,それらからおもに亜鉛と鉛を採り出していた.ただし,鉱液を運んだ花崗岩質マグマについては必ずしも確定した考えがあるわけではなく,いろいろな説がある.このほかに,精練の過程で金・銀・ビスマス・カドミウムなどの金属も採り出し,亜硫酸ガスからつくられる硫酸なども生産していた.
現在,鉱山として掘られた坑道の一部はまったく別の使われ方をしている.スーパーカミオカンデと呼ばれる宇宙素粒子研究施設が1996年 (平成8年) に設置された.宇宙から飛来してくるニュートリノと呼ばれる素粒子を観測する施設であり,ほかの宇宙線の影響を避けるために旧坑道を利用して地下約1000mの深さに巨大な水槽を設置し,その中に感知器をそなえたものである.

【関連項目】 岩石・鉱物[5] 飛騨片麻岩類

【キーワード】 亜鉛,金属資源,神岡鉱山,結晶質石灰岩,スカルン型鉱床,スーパーカミオカンデ,閃亜鉛鉱,鉛,飛騨片麻岩類,方鉛鉱

【関連文献】
川崎正士・家城康二・吉村文孝 (1985) 神岡鉱山茂住坑鉱床の最近の探鉱について―特に裂かと鉱化作用の関係―.鉱山地質,35,145–159.

【余談】
神岡鉱山の坑道を利用したもう1つの施設が「活断層地下観測場」である.断層を震源のなるべく近くで,新鮮な状態で保存されている場所で観察するために,既存の坑道から活断層が通っている位置へむかって,それを横断するように新たな坑道を掘削したものである.活断層を研究用に地表から掘った例はかなりあるが,地下で研究用に掘った例は世界でもこれが初めてである.

『学習テーマ』
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