Ver 1.00 (2006/8/24)
氷の融解・水の気化(沸騰)を原子・分子レベルでアニメーション表示します.
融解・気化の起きている「見どころ」をすぐに眺めることができます.
原子や分子の運動は実際に観察することができないため,その様子をイメージ把握するのはなかなか難しいことだと思います.
そこで,コンピュータシミュレーションの計算結果をアニメーション化し,簡単にアクセスしていただけるようにしてみました.
主として中学校の理科の授業でお使いいただくことを想定していますが,小学生から専門家の方までお楽しみいただけます.
本教材のアニメーションが, 2004年11月より 国立科学博物館 にも展示されています. その様子は こちら をご覧ください.
本教材における原子・分子の動きは,単なる想像上のものではなく,
精密な分子構造と化学結合・分子間力のモデルを用いて
物理学(力学)の法則に忠実に従ってコンピュータによる計算で模擬したものです.
その計算の方法は 分子動力学法 とよばれています.
詳しくは こちら をご参照ください.
世の中にある物質は,小さな粒子注1が集まることによってできています.この粒子の並び具合によって,物質は固体・液体・気体の3つの状態をとることができます.
固体の温度が上がると,熱振動が激しくなり,ついには粒子がある程度自由に動き回ることができるようになり,液体になります. これが融解です.
液体の温度がさらに上がるにつれ,粒子の運動は全体にますます激しくなっていきます.
液体の表面にあってしかも運動の激しい粒子は,ついには粒子同士の引き合う力をふりきって,空間に飛び出して気体となります.
これが蒸発です.
さらに温度が上がると,液体内部でも粒子同士の引き合う力をふりきって気体(泡)が発生するようになります.
これが沸騰です.
蒸発と沸騰とをあわせて気化ということもあります.
この教材では,水の状態変化
固体の氷 液体の水 気体の水蒸気
融解 気化(沸騰)
を,原子・分子レベルのアニメーション注2で眺めることができます.
注1: この 「小さな粒子」 は,分子であったり,原子であったり,イオンであったりします.
たとえば,
注2: 分子動力学法とよばれるコンピュータシミュレーションの結果をアニメーションにしています.
このアニメーションは超スローモーションです.(AVI形式のアニメーションの場合,現実の時間の流れの1兆7000億分の1の速さで再生しています.)
アニメーションファイルのダウンロードには時間のかかる場合があります.
個人的で非営利目的の使用,また学校授業での使用のためでしたら,コンテンツ・図・アニメーションのファイルをご自身のコンピュータ上に保存した上でご利用いただいても結構です.
96個のH2O分子(= 192個のH原子 + 96個のO原子)からなる氷を,80℃(= 353 K)に保持しました.
約40 ps注3 (= 40×10-12秒)後に融解が始まり,内部エネルギー E および密度 D の上昇が起こりました.
氷結晶を作っているH原子とO原子とが,激しく熱振動しています.
より激しく動いているのはどちらでしょうか?
水分子(H2O)が六角形状に並んでいるということもわかりますね.
アニメーションにおけるコマとコマとの間隔は0.02 ps注3 (= 0.02×10-12秒)に相当します.
もう少し長いアニメーション(6.7秒間)を見る (AVI形式, 4.1 MB)
水分子(H2O)が泳ぎまわっている様子がわかります.液体の水になったのです.
もう少し長いアニメーション(6.7秒間)を見る (AVI形式,4.8 MB)
それでは,次に融解が起きるときの様子を見てみましょう.
はじめのうちは結晶を構成するH原子とO原子とが激しく熱振動しているだけですが,3分の2を過ぎたあたりで結晶があっという間にくずれてしまいます.
融解が起きる様子のアニメーション(27秒間)を見る (AVI形式,17 MB)
96個のH2O分子(= 192個のH原子 + 96個のO原子)からなる液体の水を,300℃(= 573 K)に保持しました.
時間とともに,内部エネルギー E が少しずつ上昇し,密度 D は減少していきます.
気化が始まっているのです.
最初のうちは,水分子(H2O)が互いに近い距離を保ちながら泳ぎまわっています.
やがて,分子間の距離が広がっていくとともに,箱全体の体積も増大していきます.
さらに,いくつかの分子が時々まっすぐ飛んでいく様子が観察されるようになります.
もう少し長いアニメーション(1分21秒間)を見る (AVI形式,30 MB)
高知大学教育学部 赤松研究室 赤松 直,南場 功充
岐阜大学教育学部 川上研究室 川上 紳一
東京工業大学地球惑星科学専攻 河村研究室 河村 雄行
室蘭工業大学工学部材料物性工学科 澤口 直哉