中津川市蛭川にある丁場跡 |
花こう岩の採掘切出場を“丁場(ちょうば)”といいます。岐阜県の中津川市苗木地区から蛭川地区へかけての地域には多くの丁場があり,そこでは現在も花こう岩の切出し作業が行なわれています。 |
ドリルによる穴あけ(中津川市蛭川) |
岩石中の割れやすい特殊な方向を“石目(いしめ)”といいます。これは鉱物の配列に関係したり,岩体冷却の収縮に関係するといわれていますが,花こう岩において実際にこれを目で確認することはかなり難しいです。石工職人さんはこの石目を見抜いて,岩石をうまく分割していきます。昔は,ノミで石目にそって浅い穴をあけていましたが,現在は圧搾ドリルであけています。 |
開けられた穴にクサビを打ち込むことで分割されていく(中津川市蛭川) |
石目に沿ってあけられた穴に“矢”と呼ばれる小型のクサビを入れて,それを順番に大型ハンマーでたたいていくと,石目に沿って岩石がうまく分割されていきます。 |
分割された巨大な石の柱 (中津川市蛭川) |
分割の規模は用途に応じて異なりますが,地殻変動の激しい日本では,堅く均質にみえる岩石でも割れ目が入っていることが多く,あまり大きな石材を得ることはむずかしくなります。特に,細長い柱状のものは途中で折れることになりますから,大きさに限度があります。かつて中国・福建省(台湾のほぼ対岸にあたる地域)でみた石材には,道路際の電柱として花こう岩の細長い石柱が使われていました。 |
切断中の大型カッター (中津川市苗木) |
丁場で切り出された(分割された)大型の岩塊は,現在では大型カッターで切られています。カッターの円盤にはダイヤモンドが埋め込まれており,それを高速で回転させて,水をかけながら切断していきます。この小型版にあたる装置は,実験室内での岩石切断に使用され,岩石薄片の作成などにとって必需品となっています。 |
切出された巨大な石の板 (中津川市蛭川) |
大型カッターで切られた薄い板状の石材は,表面をきれいに研磨して,ビルの外壁材などに利用されています。「ビル街」には,意外にも天然の岩石が見やすい状態で並べられている例がかなり見受けられますから,注意しておくと貴重な教材になると思います。 |