火成岩はマグマから生まれた岩石です。そのマグマは『地下に存在する造岩物質の溶融体』と定義されますが,おおよそ「岩石が溶けた状態で入っている地下のタンク」といったイメージになるでしょうか。ただし,マグマという言葉は容器を指しているわけではありませんから,「タンク」にあたる言葉は“マグマ溜り”となります。



≪マグマは地球の中心部付近にあるのか?≫
 私たちは三次元の世界で生活していますが,実質的にそれを平面的な二次元の広がりで捉えているようです。それで大きな支障がないことも事実です。ところが,地球規模の空間を理解するためには,頭を意識的に三次元の空間に切り替えないと捉えにくくなります。日常生活の空間を常に三次元に広げて理解する習慣があると,それほど苦にならないと思います。


地球の内部構造
 地球の中心部付近が溶けていることはよく知られています。地球の内部構造は,中心部へ向かって,地殻,マントル(上部・下部),(外核・内核)と大まかに分けられ,ちょうどゆで卵のような同心円状の構造をしています。それらのうち,表面から約2,900〜5,100kmの深さにある外核が液体からなり,これが中心部付近で溶けていることを意味しています。ここはおもに鉄(Fe)の液体からできていますから,仮にここから地表に液体が出てくると,火山の溶岩はすべて鉄の塊になってしまいます。したがって,これはマグマにはなりません。



≪マグマの発生・組成≫
 マグマは,地球全体からみるときわめて浅い,通常は固体である場所が一時的・局所的に溶けることで形成されます。マグマが発生する状況や場所についてごく簡単に概観しておきましょう。


地球内部における岩石の融解曲線と地温分布(Kushiro et al.,1968による)
左図は,上部マントルをおもに構成する岩石(カンラン岩)が溶け始める融解曲線と地温分布を示したもので,溶融曲線より高温側で岩石は溶けます。
 水がない状態では,地温が融解曲線より常に低温側にありますから,岩石は溶けません。局所的に温度が上昇するか(A→X),圧力が低下して(A→Y),地温が融解曲線より高温側になると溶けます。ところが,これに水が加わると融解曲線がまったく異なる位置にきます。海洋地域では地温とZ点で交わりますから,これより高温側では溶ける条件になります。大陸地域ではこれよりも深部で溶けることになります。この水はプレートの沈み込みに伴って地表からもたらされ,大陸下の100〜200kmほどの深さでマグマを発生させるとの考えが有力です。
 このようにして発生したマグマが浅部(下部地殻)に移動して,温度の上昇をもたらすことで,周囲の岩石を溶かし,新たなマグマを発生させるようなメカニズムも考えられています。

地殻および上部マントルにおける化学組成の比較
 上部マントルや下部地殻を構成する物質の成分は,珪酸(SiO2)分で50%前後を占めます。これにアルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),アルカリ(Na, K)などの成分がついて珪酸塩からなる鉱物をなし,それらの集合体として岩石が作られています。マグマはそれらの全部あるいは一部が溶けてできますから,それらと類似の組成をもつことになり,珪酸塩溶融体となります。



≪マグマ溜り≫


マグマ溜りが形成される過程
 誕生したマグマの“しずく”は,そのまますぐに火成岩を形成するわけではありません。散在している液体が集まってマグマのプール(マグマポケット)を形成し,それが高粘性の液体として浮力で地表へ向かって上昇します。そして,均衡のとれる箇所で一定の空間を占めて“タンク”,すなわちマグマ溜りを形成します。そこから地表に火山岩を噴出したり,そのまま地下で固結して深成岩を形成することになります。