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19世紀なかばの発見された始祖鳥化石は、ダーウインの進化論をうらづける化石標本として、たいへん有名である。始祖鳥(アーケオプテリクス)の骨格は、湾曲した鎖骨以外には鳥類の骨格とは全く異なりは虫類に近い骨格形態を備えていた。にも関わらずこの化石が鳥類の祖先と見なされた理由は、鳥類に固有の羽毛を備えていたことである。鳥類は飛翔のために前肢が羽へと進化している。恒温動物で営巣し、卵を抱いて雛を孵したり、雛を育てる習性がある。
脊椎動物の系統分類学によると、鳥類は獣脚類という恐竜の分類群から派生したものであると考えられていた。最近、中国の遼寧省で発見された羽毛をもった恐竜化石の発見は、白亜紀前期の恐竜が獲得した属性を鳥類が引き継いでいることを明らかにした。
南京地質古生物学研究所のChenら(1998)は、シノサウロプテリクスと名づけられた骨格の記載を行っている[1]。この化石の全長は20センチぐらいであり、ニワトリほどの大きさであるが、骨格の形態からは獣脚類のコエルロサウルスに近縁であるとされている。この化石はたいへん綿羽がついていることが確認されたが、おおばねは見つかっていない。
同じ年、中国自然史博物館のJi et al. (1998)は、同じ地層から発掘された2体の恐竜化石におおばねと綿羽が備わっていることを報告している。これらの化石はマニラプトル型コエルロサウルスに属するが、種類が異なっており、パレオアーケオプテリクス、カウディプテリクスと名づけられた[2]。
 Padian (1998)に基づく[3]。
この発見によって、羽毛の起源は再検討を余儀なくされることになった。これまでは、始祖鳥化石の解釈を巡って繰り広げられた議論をみるまでもなく、羽毛は鳥類に固有の形態的特徴であるとみなされてきた。しかし、羽毛を備えた恐竜の存在は、羽毛という属性が鳥類より広い分類群に共通していることを意味しており、飛翔能力と羽毛を関連づけた羽毛起源論は再検討が必要になったのである。また、鳥類と始祖鳥の共通的性質から鳥類の認定基準が提示されてきたが、今回の発見によって、鳥類そのものが獣脚類恐竜の中間として位置づけられるようになるかもしれない。
[1] Chen, P.J. et al. (1998) An exceptionally well-preserved theropod dinosaur from the Yixian formation of China. Nature, 391, 147-152.
[2] Ji, Q. et al. (1998) Two feathered dinosaurs from northeastern China.Nature, 393, 753-761.
[3] Padian, K. (1998) When is a bird not a bird? Nature, 393, 729-730.
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