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火山[4] 湯ヶ峰火山
~恩恵の多い小粒な火山~

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【豆知識】

湯ヶ峰 (標高1067m) という山は,下呂温泉の東方にみられる赤茶けた剥き出しの崖をもつ小さな山である.この山はおもに粘性の高い,一種の溶岩ドームで作られた火山体であり,径1kmほどのきわめて小さい,おそらく県下で最小の火山体の1つであろう.湯ヶ峰火山は,比較的最近になって約10万~12万年前という年代測定値が得られたことで,活火山とは言えないが,比較的若い火山であることがわかった火山である.
この火山は小粒とはいえ,われわれの生活にいろいろと恩恵をもたらしている.その1つが温泉である.この火山の近傍に限って下呂温泉と乗政温泉がそれぞれ西側と東側にあり,いずれも阿寺断層系の断層沿いに分布していることから,湯ヶ峰火山をもたらしたマグマがまだ冷えきっておらず,両温泉の熱源になっている可能性が高いと考えられ,断層沿いに湧出している.
もう1つの恩恵は石材 (石器) である.この火山がもたらした溶岩のうち,黒褐色のものは『下呂石』,灰色や赤灰色のものは『小川石』とそれぞれ呼ばれている.下呂石は刃物のように硬く鋭い割れ口をもつことから,縄文~弥生時代にかなり広範囲に石器の材料として流布した.小川石は板状に割れるために庭石として利用されている.色の違いや性質の違いはマグマの冷え方や結晶量の差異などで生じる.

【関連項目】 火山[1] 御嶽山1979年噴火
火山[5] 上野玄武岩
資源・温泉[9] 下呂温泉

【キーワード】 阿寺断層,小川石,下呂石,下呂温泉,石器,乗政温泉,湯ヶ峰火山,溶岩ドーム,マグマ

【関連文献】
岩田 修 (1982) 下呂町に分布する湯ヶ峰デイサイト.岐阜県地学教育,18,35–42.
岩田 修・石原哲彌 (1982) 湯ヶ峰デイサイトと石器.「飛騨の大地をさぐる」,61–73.教育文化出版協会.
山田直利・柴田 賢・佃 栄吉・内海 茂・松本哲一・高木秀雄・赤羽久忠 (1992) 阿寺断層周辺地域の火成岩類の放射年代と断層活動の時期.地質調査所月報,43,759–779.

【余談】
火山の恩恵にはいろいろな場面で浴している.その代表例が温泉であり,文字通り“浴している”.ただ,それは微妙なバランスの上に成り立ったものであり,わずかな温度差で温泉も水蒸気爆発に化ける.水は1気圧で100℃を超えると水蒸気になることを忘れてはならない.

『学習テーマ』
小学6年「土地のつくりと変化 (火山) ―噴出物 (火山の恩恵)
中学1年「大地の変化 (火山と火成岩) ―噴出物


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