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化石[4] 放散虫化石
~時代を決める優れもの~

 
 
  
【豆知識】

チャートは珪酸 (SiO2) 成分からなる微化石が長い時間をかけて海底に堆積したことで形成された岩石である.その微化石の多くは放散虫化石であり,径1mm以下の大きさで,丸いもの,細長いもの,円錐状のもの,それにたくさんの突起をつけたものなど,さまざまな形をなす.そうした1個1個の単体が示す形態の特徴が生息時期によって異なり,それが時代をかなり細かく特定できる手段に使えることから,チャートの堆積した時代が決められることになる.そこにこの微化石が示準化石として重要視される理由がある.しかし,重要な化石であっても簡単に手に入れることはできない.
チャートは微化石の集合体であるから,その単体は薬品で溶かしてバラバラにして得ることになる.フッ化水素酸 (HF) は普通の岩石を溶かしてしまうほどかなり強力な酸であり,チャートもこれに浸けておくだけで溶けていく.そのまま放置しておくと放散虫化石まで溶けてしまうので,化石が溶けない程度に時間と薬品の濃度を微妙に調節することで化石だけを取り出している.こうして得られた放散虫化石の単体はきわめて小さいものであるから,普通の顕微鏡では確認できず,電子顕微鏡を使って細部の形態まで観察して種類の特定をしている.普通の化石は地層や岩石の中から手で取り出して,目で確認できるものであるが,放散虫化石は微細なものだけにかなり手間ひまをかけてやっと得られる化石である.これによって厚さ1~2cmのチャート層の単位で美濃帯堆積岩類の形成年代を決められるようになり,日本列島の形成史を書きかえるほどの重要な化石となった.

【関連項目】 地形[5] 金華山
景勝地[7] 日本ライン
岩石・鉱物[7] 美濃帯堆積岩類

【キーワード】 示準化石,チャート,電子顕微鏡,年代決定,微化石,フッ化水素酸,放散虫化石

【関連文献】
斉藤 眞・利光誠一・杉山和弘・竹内 誠・栗本史雄・中江 訓 (1997) ジュラ紀付加体と放散
虫化石―地質標本館新規展示解説―.地質ニュース,514号,7–13.

【余談】
放散虫化石を取り出すために使うフッ化水素酸 (通称: フッ酸) は,岩石の化学分析にとっても必需品である.最近では分析機器で岩石の化学成分を求める方法が一般的になっているが,薬品で溶かしたり,沈殿させたりしながら化学成分を求めていたころは,実験室の透明窓ガラスはすべてすりガラスになっていた.実験室内に漂ったフッ酸の蒸気でガラスの表面が腐食されたためである.もちろんガラス製品はいっさい使えない.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (地層と大地の歴史) ―化石 (中生代・古生代)


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