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景勝地[7] 日本ライン
~史上最大の生物大量絶滅~

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【豆知識】

美濃加茂市から各務原市鵜沼へ至る木曽川流域は日本ラインと呼ばれる景勝地であり,河床の奇岩と両岸の景観をセールスポイントとして急流川下りを楽しむ場所となっている.ここに分布する岩石はおもに美濃帯堆積岩類のチャート層と砂岩層であり,金華山を含めた岐阜市周辺の山がつくるチャート層と砂岩層の組織地形を東へ延ばした位置にあたる.この景勝地から地球史規模で起こった大事件の証拠が提起されている.
チャートに含まれる放散虫化石は,かなり細かい時代区分を行なえる有効な示準化石であり,これまでにも美濃帯堆積岩類の時代決定に有効な役割を果たしてきている.日本ラインに分布するチャートについてもかなり詳細に時代決定がなされ,数百m規模の厚さをもつチャート層の内部に地層面に平行に走る衝上断層がいくつもあり,それによって古生代のペルム紀から中生代のジュラ紀に至る時期に形成されたチャート層が繰り返し重なっていることが明らかにされている.繰り返し重なるチャート層はおもに赤褐色をしたきれいな縞模様をなす層状のチャート層からなるが,その中に灰~黒色のチャート層が断層で繰り返して2ヶ所にみられ,これが大事件の主役である.
灰~黒色のチャート層は有機質の泥や黄鉄鉱といった酸素の乏しい場所でできた物質を含んでいるために黒色系の色を示し,ペルム紀最末期 (約2億4500万年前) に形成された.その上位にある三畳紀初期 (約2億4000万年前) のチャート層と下位にあるペルム紀後期 (約2億5000万年前) のチャート層は赤褐色をなし,酸素が豊富にあった場所にできたことで微量の赤鉄鉱を含むために赤褐色にみえるとされている.すなわち,ペルム紀最末期だけに酸素の乏しい時期が存在したことになる.この時期には地球規模で酸素が欠乏したことで,地球上の生物の約90%が絶滅したといわれており,その原因が地球自体がもつ内因的なものにあると考えられているが,詳細はまだ謎とされている.

【関連項目】 化石[4] 放散虫化石
地形[5] 金華山
岩石・鉱物[7] 美濃帯堆積岩類

【キーワード】 酸素欠乏,生物絶滅,チャート,日本ライン,放散虫化石,美濃帯堆積岩類

【関連文献】
磯崎行雄 (1994) 超酸素欠乏事件―史上最大の生物大量絶滅シナリオ―.科学,64,135–144.
Yao,A., Matsyda,T. and Isozaki,Y.(1980) Triassic and Jurassic radiolarians from the Inuyama area, central Japan. Jour.Geosci., Osaka City Univ., 23, 135–154.

【余談】
恐竜のようにそれまで繁栄を続けてきた生物が突如,絶滅するというのはやはり衝撃的である.その原因が何であれ,個体の誕生を上回る死があり,その累積結果として絶滅に至ることになる.それは決して瞬間的に起こることではない.仮に,ある生物が1億年間にわたり地球上で繁栄し,最後の100万年の期間で絶滅に至ったとするならば,それは突然の絶滅として認識されるであろう.人類はせいぜい100万年のオーダーで地球上に存在しているだけである.すでに絶滅の期間に入っていないことだけを祈ることにしよう.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (地層と大地の歴史) ―化石


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