“エル・ニーニョ” とは

南アメリカ大陸の西岸には,南から冷たいフンボルト海流が流れている。この海流は,地球の自転による力 (コリオリの力) を受けて,北上するにつれて沖へ遠ざかるので,その隙間に,深層海水が表層まで沸き出している。
フンボルト海流は深層からの沸昇流でもあり,栄養塩類に富んでいるためプランクトンの繁殖が盛んで良好な漁場である。ところが数年に1度,北の赤道域からペルー沖に温暖な海水が南下することがある。温暖海水は栄養塩類に乏しくプランクトンが減少し,漁獲量が大きく減る。
この暖流は,地元の船乗りの間では古くから知られていた。北からの暖流は毎年クリスマスのころに強くなるので,エル・ニーニョ (el Niño; スペイン語でイエス・キリスト) と呼ばれた。通常,こうした暖流はしばらくすると弱まるが,数年間も持続することがある。この状態を,エル・ニーニョ現象(el fenomeno del Niño)と呼ぶ。
el niño” (エル・ニーニョ) はスペイン語で “男の子” という意味だが, “el Niño” は固有名詞でイエス・キリストを意味する。
del” は “de el” の短縮形である。
1891年にはエル・ニーニョ状態がきわめて強くなった。リマ地理学会会長のルイス・カランザ博士は短い論文を執筆し,エル・ニーニョ現象への注目を促している。

© 2002 Gifu University, Shin‐Ichi Kawakami, Nao Egawa.