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化石[1] 福地のオルドビス紀化石
~つい最近の最古~

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【豆知識】

地球上に最初に現れた生き物は最も原始的な原核生物と呼ばれる単細胞生物であり,約35億年前とも40億年前ともいわれている.地球そのものの年齢が45.5億年であるから,地球誕生後それほど時間が経たないうちに生物が現れたことになる.
上宝村福地(ふくじ)の周辺地域には,サンゴ,三葉虫,ウミユリなどの暖かくて浅い海に棲んでいた動物化石をたくさん含む飛騨外縁帯を構成する地層が分布する.これらの化石は日本列島で最も古い古生代のシルル紀 (約4億4000万~約4億年前) を示すものとされてきた.ところが,1980年 (昭和55年) に福地の一の谷でミジンコの仲間である貝形虫の化石が発見され,それがシルル紀よりも一つ古いオルドビス紀 (約5億~約4億4000万年前) のものであることがわかり,日本列島最古の化石となった.ただし,この化石を含む岩石は谷に転がっていた石であり,露頭にある地層から得られたものではなかった.1997年 (平成9年) に上宝村一重ヶ根(ひとえがね)にある地層から明瞭にオルドビス紀を示すコノドント化石が発見されて,この時期を示す化石と地層の存在が明確になった.コノドント化石は0.3~数mmの大きさで,ギザギザした歯のような形をしたものである.当初は謎の動物の部位不明化石とされていたが,現生の無顎類ヤツメウナギのような動物で,古生代のカンブリア紀後期 (約5億1000万年前) に出現し,中生代の三畳紀後期 (約2億年前) に絶滅した動物の歯の化石と考えられている.現在でもこれより古い時期の化石は日本列島では発見されていない.ただ,最古とはいっても地球が生まれてから9割ほどの約40億年という時間が経過した時期であり,日本最古の化石も見方によっては“つい最近”のものである.

【関連項目】 景勝地[4] あじめ峡

【キーワード】 オルドビス紀,貝形虫化石,コノドント化石,最古の化石,シルル紀,一重ヶ根,福地

【関連文献】
猪郷久義・安達修子 (1981) 岐阜県上宝村福地付近の古生界研究の現状と問題点.地学雑誌,90,336–345.
Igo,H., Adachi,S., Furutani,H., & Nishiyama,H.(1980) Ordovician fossils first discovered in Japan. Proc.Japan.Acad., vol.56, Ser.B, 499–503.
束田和弘・小池敏夫 (1997) 岐阜県上宝村一重ヶ根地域より産出したオルドビス紀コノドント化石について.地質学雑誌,103,171–174.

【余談】
化石にもいろいろあり,恐竜のような大型のものもあれば,普通の顕微鏡でも見えないほど微細なものもある.過去の生き物の遺体または遺跡をすべて化石というから,単細胞生物の化石もある.世界最古の化石は単細胞生物であり,微細なだけにそれを探し出す苦労も並大抵ではなかろう.ところで,その単細胞生物は動物なのであろうか,植物なのであろうか.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (地層と大地の歴史) ―化石 (古生代)


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