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化石[2] 瑞浪層群
~高速道路がもたらした化石~

 
 
 
  
【豆知識】

第三紀の中新世前期から中期にかけての時期 (約2200万年~約1500万年前) に,おもに東濃地方を中心に広い範囲に地層が形成された.それらをまとめて瑞浪層群と呼ぶ.瑞浪層群は,東から岩村・瑞浪・可児の3地域にわかれて分布し,下部層から順に淡水・汽水・海成の地層からなり,最初は3地域にあった湖のうち,岩村・瑞浪地域の湖に南から海が入りこみ,やがて両地域が海域としてつながっていった.この地層群はそれぞれの盆地ごとにそれぞれの時期に多くの化石を含むことで有名であり,特異な哺乳動物デスモスチルスをはじめとして,ビカリアなどの貝類化石,サメ・エイ類などの板鮫類化石,植物化石など,いずれもよく知られた化石が多い.貝類化石などからは淡水・汽水・海水あるいは水深といった棲息環境の変化を,植物化石からは温暖・寒冷などの気候をそれぞれ推定することができ,こうした棲息環境をしめす示相化石から瑞浪層群の堆積環境がかなり詳細に復元されている.
瑞浪地域に堆積した瑞浪層群は,下位から,土岐夾炭累層,本郷累層,明世累層,生俵累層に区分されている.土岐夾炭累層は淡水成層でおもに泥岩からなり,亜炭としてかつてさかんに採掘された褐炭層や,基底部にはウラン鉱床を含む礫岩をともなう.冷温帯の植物化石が多くふくまれ,カニサイなどの哺乳動物化石も含まれる.本郷累層は全体に凝灰質で,おもに砂岩・シルト岩・泥岩の互層からなり,軽石粒を多くふくむ.ケヤキやツゲなどの植物化石,炭質物・珪化木をふくむ.明世累層は瑞浪盆地全域にわたり分布する海成層で,凝灰質砂岩層,凝灰質シルト岩層,軽石質凝灰岩層などいろいろな岩相をともない,大量の化石を含むことを特徴とする.生俵累層はおもに海成で無層理の均質な泥岩層からなり,貝類化石などは少ないが,温暖な気候を示す植物化石が含まれる.中央高速道の工事の際にこれらの地層が各所で掘削されたことで大量の化石が産出した.それらを整理して展示した施設が瑞浪市化石博物館である.

【関連項目】 資源・温泉[2] ウラン鉱床
資源・温泉[4] 亜炭

【キーワード】 明世累層,アネクテンスゾウ,生俵累層,貝類化石,示相化石,植物化石,堆積環境,中央高速道,中新世,デスモスチルス,土岐夾炭累層,板鮫類化石,ビカリア,本郷累層,瑞浪市化石博物館,瑞浪層群,瑞浪盆地

【関連文献】
糸魚川淳二 (1974) 瑞浪層群の地質.瑞浪市化石博物館研究報告,1号,9–42.
糸魚川淳二 (1980) 瑞浪層群の地質.瑞浪市化石博物館専報,1号,1–50.

【余談】
化石採取というのは一種の宝捜しのような要素をもっている.しかし,たとえ化石とはいえ過去の生物に直接触れることのできる唯一の機会であるから,ただの宝捜しではもったいない.採取した化石の種類から当時の様子を自分なりに想像し復元してみると,採取した化石が生きてくるし,自分なりの希少価値がでてくる.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (地層と大地の歴史) ―化石 (新生代第三紀)


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