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景勝地[4] あじめ峡
~形成史を解く礫岩~

 
  
【豆知識】

高山市街地を北へむかって流れた宮川は,国府町へ入ると向きを西へと変え,川幅を狭める.ここにかかるJR高山線の鉄橋付近から下流はあじめ峡と呼ばれ,宮川が急流の岩場を作って流れる.ここに分布する岩石は上広瀬層と呼ばれ,礫岩を主体に砂岩,安山岩質・玄武岩質火山岩類などをともなう.礫岩は玄武岩質の凝灰岩を基質として花崗岩の礫をたくさん含むことで特徴づけられ,これらの花崗岩礫は飛騨帯を構成するかなり古い大陸基盤に由来する岩石と考えられている.上広瀬層は,その南東側で古生代のペルム紀前期 (約2億8000万年前) に形成された地層 (森部層) を整合に覆うことなどから,ペルム紀 (前期? ) に形成されたと考えられている.これらのさらに南東側にあたる国府町三川(さんせん)(さんがわ)付近には,緑色をした結晶片岩がみられる.これは荒城川層と呼ばれ,古生代の石炭紀前期 (約3億5000万年前) の砂岩や海底火山噴出物が強いを受けてできた変成岩からなる.このように,あじめ峡周辺域には古生代の石炭紀~ペルム紀に形成された岩石類が北東–南西方向に帯状に並んで分布し,飛騨外縁帯と呼ばれる地帯をつくっている.
飛騨外縁帯は,飛騨帯と美濃帯とに挟まれる地帯で,岐阜県下では北アルプスの槍ヶ岳付近から南西に向かって上宝村の蒲田(がまた)川沿い,丹生川村の荒城川沿い,国府町のあじめ峡付近へと途切れながらも幅数kmほどの範囲に帯状に分布し,いったんは濃飛流紋岩に覆われて分布が不明になるが,清見村楢谷(なろだに),白鳥町石徹白(いとしろ),そして福井県の九頭竜湖付近へとつながっていく.この地帯には,日本最古の化石を含むオルドビス紀の地層を含めて古生代の地層,結晶片岩,蛇紋岩なとが多数の断層で区切られ,若い時代の岩石類に覆われたり,貫かれたりしながら複雑に分布している.この地帯の形成過程は美濃帯の形成過程と関連させていろいろ議論されているが,残念ながら全体を通しての統一的な説明がなされているわけではない.

【関連項目】 化石[1] 福地のオルドビス紀化石
災害[6] 栃尾洞谷土石流

【キーワード】 あじめ峡,荒城川層,花崗岩礫,上広瀬層,結晶片岩,飛騨外縁帯,森部層

【関連文献】
棚瀬充史 (1988) 高山市付近の飛騨外縁帯.「飛騨の大地をさぐる」,140–149,教育出版文化協会.

【余談】
飛騨外縁帯の構成岩石は場所によりかなり異なり,この地帯をすっきりと規定できない理由になっている.飛騨帯と美濃帯にはさまれた地帯であり,両者に入らないものをまとめて詰め込んだという印象もある.詰め込んだのが自然界の仕業なのか,人間の都合による仕業なのか,これから徐々に解かれていくことになろうが,古い時代のものばかりだけに手ごわい.

『学習テーマ』
日本列島の形成


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