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地形[4] 北アルプス
~動くこと山の如し~

 
 
  
【豆知識】

北アルプスは,日本で3番目に高い奥穂高岳 (標高3190m) や4番目の槍ヶ岳 (同3180m) などを含めて2500~3000m級の峰が連なる日本有数の山岳地帯を形成している.日本では最高峰の富士山が火山であるために,標高の高い山を火山体と考えがちであるが,北アルプスは富士山のような独立峰ではなく,全体として標高の高い山が100kmの規模で連なる山脈を形成している.北アルプスが高い標高をもつ理由は,全体としてどんどん上昇 (隆起) しているためである.河川はその時の海水面に近づくように大地を浸食していくため,隆起量が多ければ下方へ浸食していくことになり,急峻な地形が生まれる.“出る杭は打たれる”のことわざのとおり,上昇とともに容赦なく削られていき,その差し引きで現在の標高が作り出されている.急峻な地形は大地の隆起を反映しているといってもよい.
北アルプスの隆起運動はいま現在も継続している運動であり,中央アルプスも南アルプスも同じように隆起を続けている地域である.武田信玄は「動かざること山の如し」と言ったが,そのお膝元の山々は「動くこと山の如し」なのである.高い標高を維持しているのは浸食に打ち勝って隆起しているからであり,そのため現在も隆起を続けていると考えるのである.浸食との差し引きで仮に年平均1mmで上昇しているとするなら,1000年で1m,100万年で1000mとなる.100万年という期間は地質現象としての最低時間単位と考えてよく,それだけの期間を考えると,人間がほとんど感じることのできない程度の運動でもかなり大きな変化量をもたらす運動となる.北アルプス地域が他の地域とかなり異なる急峻な地形を作り出しているのは,それなりの“出る杭”だからである.

【関連項目】 地形[2] 高山盆地
地形[6] 位山分水嶺
資源・温泉[12] 奥飛騨温泉郷

【キーワード】 北アルプス,山脈,浸食作用,隆起運動

【関連文献】
第四紀地殻変動研究グループ (1968) 第四紀地殻変動図.第四紀研究,7, 182–187.
原山 智・竹内 誠・中野 俊・佐藤岱生・滝沢文教 (1991) 槍ヶ岳地域の地質.地域地質研究報告 (5万分の1地質図幅) ,地質調査所,190P.
国立防災科学技術センター (1969) 第四紀地殻変動図.

【余談】
山は高いからだけで登るわけではなかろうが,山にかぎらず人間はやはり高い所に登りたがる.一種の征服感なのであろうか.岐阜城に登った織田信長の心境に通じるものがあるかもしれない.北アルプスが登山のメッカとなるのもやはり高いからであろう.しかし,隆起運動が止まればどうなるであろうか,楽しみである.

『学習テーマ』
小学5年「流水による土地の変化―削剥
中学1年「大地の変化 (地層と大地の歴史) ―浸食,山地の形成


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