【豆知識】
山の高さは海抜高度で示され,2500~3000m級の峰が連なる
北アルプスには確かに高い山がたくさんある.その一方で,海抜高度は高くなくても目の前に見上げるような山があると,あるいは周囲の地形とくらべて独立した峰があると,やはり高い山という感覚をもつ.岐阜城がのる
金華山は標高328mに過ぎない山であるが,北側では長良川の川面からそそり立ち,南側で大岩壁によって
濃尾平野に接する.そうした姿が“高い山”を印象づけ,それにともなって金華山が昔は火山であったというとんでもない誤解も生まれているようである.そそり立つ独立した山 = 火山体というイメージは理解できないわけではないが,金華山には火山の気配はまったくない.
この山は
美濃帯堆積岩類を構成する岩石の一部をなし,おもに赤色や灰色をした
チャートと呼ばれる岩石でつくられている.チャートは,海洋で浮遊生活をしていた放散虫という珪酸 (SiO
2) 成分からなる原生動物が1,000 年に数mmといわれるほどかなりゆっくりと深い大洋底に堆積して固まった岩石である.その成分は石英 (水晶) と同じであり,それと同じ硬さをもち,昔は火打石に使ったほど硬い岩石である.金華山をつくるチャートは
放散虫化石の種類から古生代のペルム紀後期から中生代の三畳紀中期にかけての時期 (約2億6000万~約2億3000万年前) にできたことが分かっている.金華山から東方へむかって各務原市や
日本ラインへかけての地域では,大きく見るとチャート層と砂岩層が東西方向に交互に並んで分布している.硬くて侵食に強いチャート層が高い尾根を,相対的に軟らかく浸食されやすい砂岩層が低い山をそれぞれつくり,その分布をみごとに反映した横U字形の組織地形が続いている.金華山は,高く残されたチャートの屋根がさらに孤立するように周囲を削りとられ,長良川によって深くえぐられたことにより,周囲の平地部からそそり立つように“高い山”となったものである.