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地形[5] 金華山
~誤解を生む“高い山”~

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【豆知識】

山の高さは海抜高度で示され,2500~3000m級の峰が連なる北アルプスには確かに高い山がたくさんある.その一方で,海抜高度は高くなくても目の前に見上げるような山があると,あるいは周囲の地形とくらべて独立した峰があると,やはり高い山という感覚をもつ.岐阜城がのる金華山は標高328mに過ぎない山であるが,北側では長良川の川面からそそり立ち,南側で大岩壁によって濃尾平野に接する.そうした姿が“高い山”を印象づけ,それにともなって金華山が昔は火山であったというとんでもない誤解も生まれているようである.そそり立つ独立した山 = 火山体というイメージは理解できないわけではないが,金華山には火山の気配はまったくない.
この山は美濃帯堆積岩類を構成する岩石の一部をなし,おもに赤色や灰色をしたチャートと呼ばれる岩石でつくられている.チャートは,海洋で浮遊生活をしていた放散虫という珪酸 (SiO2) 成分からなる原生動物が1,000 年に数mmといわれるほどかなりゆっくりと深い大洋底に堆積して固まった岩石である.その成分は石英 (水晶) と同じであり,それと同じ硬さをもち,昔は火打石に使ったほど硬い岩石である.金華山をつくるチャートは放散虫化石の種類から古生代のペルム紀後期から中生代の三畳紀中期にかけての時期 (約2億6000万~約2億3000万年前) にできたことが分かっている.金華山から東方へむかって各務原市や日本ラインへかけての地域では,大きく見るとチャート層と砂岩層が東西方向に交互に並んで分布している.硬くて侵食に強いチャート層が高い尾根を,相対的に軟らかく浸食されやすい砂岩層が低い山をそれぞれつくり,その分布をみごとに反映した横U字形の組織地形が続いている.金華山は,高く残されたチャートの屋根がさらに孤立するように周囲を削りとられ,長良川によって深くえぐられたことにより,周囲の平地部からそそり立つように“高い山”となったものである.

【関連項目】 化石[4] 放散虫化石
断層[2] 鏡岩
景勝地[7] 日本ライン
岩石・鉱物[7] 美濃帯堆積岩類

【キーワード】 金華山,組織地形,チャート,放散虫化石

【関連文献】
吉田史郎・脇田浩二 (1999) 岐阜地域の地質.地域地質研究 (5万分の1地質図幅) ,地質調査所,71P.

【余談】
今でこそ金華山は鵜飼とともに岐阜市の観光拠点となっているが,戦国時代には難攻不落の砦としての軍事拠点であった.木下藤吉郎が織田信長の命令で無血クーデターで手に入れるだけの価値がある場所であった.それをネタに観光拠点に変えた現代人にとって,ここはどのような価値のある場所なのであろうか.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (地層と大地の歴史) ―浸食,化石


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