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岩石・鉱物[7] 美濃帯堆積岩類
~地層にならない堆積岩類~

 
  
【豆知識】

岐阜県内では,北から南へ,飛騨帯飛騨外縁帯,美濃帯と呼ばれる3つの地質構造帯が東西方向に帯状に分布して基本的な地質構造を作っている.これらの地質帯は,おおよそジュラ紀中期までに形成された地質体に適応でき,それ以降の手取層群濃飛流紋岩などは,この基本構造と無関係に形成されている.とりわけ,濃飛流紋岩は3つの地質構造帯すべてにまたがるように県内のかなりの範囲を覆って分布している.
3つの地質構造帯のうち,美濃帯は濃飛流紋岩の西側にあたる県内西半部の広い範囲と北東側の高山市東部から乗鞍岳周辺地域に分布する.ただし,濃尾平野のように若い時代の地層が覆っている場所もかなりあるので,地表にびっしりと分布しているわけではない.この美濃帯を構成する岩石類をまとめて美濃帯堆積岩類とか美濃帯堆積岩コンプレックスと呼ぶ.チャート,砂岩,泥岩,石灰岩,玄武岩質火山岩類などからなり,古生代の石炭紀から中生代のジュラ紀にかけての時期に形成された堆積岩や火山岩がジュラ紀に当時の海溝堆積物と混ざり合って付加体堆積物と呼ばれる堆積体を形成したものである.地層の破断,混合,繰り返しなどがおこなわれたことで,かなり複雑な構造をもつ地質体が形成されたため,単なる地層とか地層群という考え方では記述できず,おもに堆積岩からなる複合岩体 (コンプレックス) として扱われている.美濃帯内部では,地質体の組み合わせの特徴に基づいてユニット区分がなされており,ユニットの境界もユニット内部の堆積体の境界も断層であることが多い.美濃帯はそのまま西方へ延長され,関西地方で丹波帯とよばれる地質帯につながり,両者をあわせて美濃‐丹波帯と呼ぶこともある.

【関連項目】 地形[5] 金華山
地形[14] 養老山地
化石[4] 放散虫化石
災害[7] 越美三大崩れ
資源・温泉[1] 石灰石
断層[2] 鏡岩
火山[18] 枕状溶岩
景勝地[2] 飛水峡
景勝地[7] 日本ライン

【キーワード】 丹波帯,付加体堆積物,美濃帯,美濃帯堆積岩コンプレックス,美濃帯堆積岩類

【関連文献】
斎藤 眞 (1997) 日本のジュラ紀付加コンプレックス研究の進展.地質ニュース,514号,14–22.
山下 昇・粕野義雄・糸魚川淳二編 (1988) 日本の地質5「中部地方Ⅱ」.共立出版,310P.

【余談】
美濃帯を構成する岩石類は,古くは“秩父古生層”と呼ばれていた.放散虫化石による時代区分など思いもよらない頃の話である.産出する化石がいずれも古生代のものばかりであれば,古生層と考えても無理はない.中生代の化石がでると首を傾げて“異常! ”と形容した.しかし,今から思えば“異常”の中に本来の姿が隠されていたことになる.人間社会はどうであろうか.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (地層と大地の歴史) ―堆積岩,地層


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