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岩石・鉱物[4] 濃飛流紋岩
~濃飛バスが名づけ親~

 
 
  
【豆知識】

恐竜が地球上で最も繁栄していた頃,日本列島ではかなり激しい火山活動が起こっており,それによって中部地方にもいくつかの岩体が形成された.濃飛流紋岩,大雨見山層群,笠ヶ岳流紋岩,奥美濃酸性岩類などと呼ばれる岩体がそれらにあたる.なかでも濃飛流紋岩は,南東端にあたる恵那山付近から北西端にあたる白川村地域にいたる広大な地域に分布する巨大な火山岩体である.岐阜県の面積の1/4ほどを占める地域に広がっており,その名が示すとおり美濃と飛騨にまたがる地域を覆いつくす岩体である.
濃飛流紋岩は,中生代の白亜紀後期から新生代の古第三紀へかけての時期にあたる約8000万年前から約6000万年前までの2000万年ほどの期間をかけてできた岩体である.火山噴出物が積み重なってできた岩体であることは間違いないが,御嶽山乗鞍岳のような火山体のイメージとはほど遠いものである.遠くから眺めても山体の姿が描けるわけではない.われわれの目にはただ堅固な岩石が延々と広がっているだけのものとしか映らない.当時の様子を復元することは簡単なことではないが,径数十kmにも及ぶ巨大な陥没盆地 (コールドロン) を形成し,その中に大規模な火砕流が噴出して堆積物を厚く積み重ねていった.それらは,1991年の雲仙普賢岳における火砕流噴火とはくらべものにならないほどきわめて大規模な,おそらく地質学上でも最大規模に属する火砕流と考えてよい.それらは厚い溶結凝灰岩として数十kmにわたり広がって分布している.
広大な地域に分布する岩体の調査は1960年頃から本格的に始まったが,1970年頃までは現在のように自動車で自由に動き回れる時代ではなかった.調査はもっぱら公共交通機関としての路線バスが利用された.そのバスこそ“濃飛バス”であり,そのお陰で成果が蓄積されて行ったことから,この岩体が濃飛流紋岩と命名された.

【関連項目】 火山[11] 溶結凝灰岩

【キーワード】 大雨見山層群,奥美濃酸性岩類,火砕流,笠ヶ岳流紋岩,濃飛流紋岩

【関連文献】
河田清雄・山田直利・礒見 博・村山正郎・片田正人 (1961) 中央アルプスとその西域の地質: その2―濃飛流紋岩類―.地球科学,54号,20–31.
小井土由光 (1993) 濃飛流紋岩におけるコールドロン.月刊地球,15,717–720.
山田直利・河田清雄・諸橋 毅 (1971) 火砕流堆積物としての濃飛流紋岩.地球科学,25,52–88.

【余談】
濃飛流紋岩は確かに大きい.それゆえこの時期の火山活動を代表する岩体として扱われてきている.その主体を占める岩石はいずれもよく似た顔つきをした岩石である.しかも堅固で,礫として残りやすいこともあり,岐阜県内の河原の石ころには必ずといってもよいほど含まれている.そうした岩石を半ば業界用語的に“ノウヒ”と呼んでいる.これは他の地域,他の地方へいっても同じである.それほど代表的な岩石からなる代表的な岩体である.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (火山) ―火成岩,火山岩


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