岐阜の地学  岩石・鉱物  苗木・土岐花崗岩  濃飛流紋岩

岩石・鉱物[3] 滝谷花崗閃緑岩
~できたての花崗岩~

  
【豆知識】

花崗岩は,どちらかといえば地質時代のなかでも限られた時期に,限られた場所にだけ形成される傾向があるとされてきた.花崗岩類の形成をおもな特徴とする火成活動があることも事実であり,例えば日本列島では,中生代後期から新生代初期にかけての時期におもに西南日本で広域にわたりそれがみられる.こうした火成活動があるために,似たような場所にある花崗岩類はひとまとめにして同じ火成活動による産物と考えてしまう傾向がこれまでにはあった.しかし,年代測定技術が向上し,地質学的な情報が増えるにつれていろいろな時期に形成される花崗岩類があることがわかってきた.
岐阜県下に分布する花崗岩類は,中生代初期の約1億8000万年前に飛騨地方に形成された船津花崗岩と呼ばれるものと,中生代後期から新生代初期にかけての6000万~5000万年前頃に東濃地方 (苗木花崗岩・土岐花崗岩) や北アルプス地域 (奥又白花崗岩) ,庄川流域 (白川花崗岩) などで形成されたものの大きく2種類に分けられてきた.ところが,庄川流域では約1億年前のもの (北俣谷閃緑岩) ,両白山地の能郷白山では約2000万年前のもの (能郷白山花崗閃緑岩) といった具合に,それまでに考えられていた枠に納まらない花崗岩類の存在が明らかにされている.さらには,北アルプスでは約200万~100万年前という,きわめて最近になって形成された花崗岩体の存在が明らかにされた.この岩体は滝谷花崗閃緑岩と呼ばれ,上宝村の滝谷を中心に北アルプス主稜線の西側斜面にあたる地域に分布し,地表に露出する深成岩体としては世界で最も若い岩体である.地下の岩体内部ではまだ熱く,ひょっとするとまだ固結していないかもしれない“できたてのホヤホヤ”の花崗岩である.

【関連項目】 資源・温泉[12] 奥飛騨温泉郷

【キーワード】 奥又白花崗岩,花崗岩,北俣谷閃緑岩,白川花崗岩,世界最新深成岩体,滝谷花崗閃緑岩,土岐花崗岩,苗木花崗岩,年代測定,能郷白山花崗閃緑岩,船津花崗岩

【関連文献】
Harayama,S(1992) Youngest exposed granitoid pluton on Earth: Cooling and rapid uplift of the Pliocene‐Quaternary Takidani Granodiorite in the Japan Alps, central Japan. Geology, 20, 657–660.
原山 智 (1994) 世界一若い露出プルトンの冷却史―北アルプス,滝谷花崗閃緑岩の年代と冷却モデル―.地質学論集,43号,87–97.

【余談】
花崗岩という岩石はイメージの先行しがちな岩石である.“地下でゆっくり固まった”のだからそれなりの時間をかけてできるものであり,1000万年オーダーの時代まで遡らないと花崗岩類はみられない.つい最近まで,専門家ですらこのようなイメージで考えていた.ところが,いま現在作られつつある花崗岩体があっても不思議でない,と考えるのが昨今の状況である.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (火山と火成岩) ―深成岩,花崗岩


岐阜の地学  岩石・鉱物  苗木・土岐花崗岩  濃飛流紋岩

ホーム岐阜の地学・よもやま話 copyright © Yoshimitsu Koido 2001–2002.
製作・著作: 小井土 由光 (email), ページ作成: 江川 直 (email).