岐阜の地学  岩石・鉱物  日本最古の岩石  滝谷花崗閃緑岩

岩石・鉱物[2] 苗木・土岐花崗岩
~地下浅所でできた深成岩~

 
 
  
【豆知識】

地球の中心部近くが溶けていることはよく知られているが,それとマグマとを混同している人が意外と多い.マグマは,地球表面近くの100kmほどの範囲にあって,通常は固体状態にあるものが,何らかの原因で液体となって一定の空間を占めているものであり,それが固結したものが火成岩である.地球の中心部近くで溶けているのは表面から約2900km以深であり,その液体はほとんど鉄でできている.
火成岩は,マグマがほぼそのまま地下で固結した深成岩と地表に噴出した火山岩とに分けられる.火山岩の場合には溶岩として目に触れる機会もあるので,マグマから岩石が形成されていく過程をイメージしやすい.しかし,深成岩は地球内部で形成されるため,ある程度の類推はできても実際の冷却固結過程を理解することはむずかしい.深成岩として最もなじみのある岩石は花崗岩である.花崗岩は,一般に斜長石,石英,カリ長石,黒雲母などの鉱物が数~十数mmの大きさ (粗粒) で,いずれも似たような粒径 (等粒状組織) をもって岩石全体を占めて完晶質組織をつくる.こうした岩石組織はマグマが地下深くでゆっくりと時間をかけて冷え固まったためと理解されている.しかし,ゆっくりと冷えたことはよいが,それが地下の深いところという保証はない.
東濃地方に広く分布する苗木花崗岩土岐花崗岩は,いずれも粗粒で等粒状完晶質の組織を示し,マグマがゆっくりと時間をかけて冷却してできた深成岩としての特徴をもつ岩石である.ところが,これらの花崗岩がマグマとして貫いたときに周囲にあった岩石は地表に噴出した火山岩 (濃飛流紋岩) であり,それらは深くても1km程度の深さまでしか分布しない.すなわち,深成岩というイメージからはとても考えられない浅いところに液体として貫入した ( = マグマがあった) ことになる.地下浅所でも深成岩の岩石組織が作られるには冷却速度さえ遅ければ可能であり,マグマの規模からくる熱容量の大きさが関係しているようである.花崗岩が地下深所で形成されるとするイメージは単なる思いこみに過ぎない.

【関連項目】 地形[3] 東濃地方
資源・温泉[2] ウラン鉱床
資源・温泉[3] 窯業原料
災害[3] 花崗岩地帯の土砂災害

【キーワード】 花崗岩,火成岩,深成岩,土岐花崗岩,苗木花崗岩,熱容量,濃飛流紋岩,マグマ

【関連文献】

【余談】
誰もが中学校の理科で,「地下深くで固まるから深成岩」と習ったのではないだろうか.より適切な言い方に近いが,「地下でそのまま固まった」と簡単に表現されたかもしれない.いずれにしろ,多くの人がそこから受けるイメージは“地下 = 深い”であり,想像しにくい世界はどこも同じに扱われるのが常である.それでいて文字から受けるイメージだけは一人歩きをしているのが常である.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (火山) ―火成岩,深成岩


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