岐阜の地学  災害  岐阜県の土砂崩れ  濃尾平野の水害と御囲堤

災害[3] 花崗岩地帯の土砂災害
~バランスを整える崩壊~

 
 
  
【豆知識】

花崗岩は等粒状完晶質の組織をもつ岩石であり,風化するとマサ化して粗い砂粒の集合体を大量に形成する.東濃地方に広く分布する花崗岩類はもともと堅固な岩石・岩体であるが,地表に露出した時点からマサ化が休みなく働いており,現在もその途上にある.その中で,東濃地方では新第三紀末の鮮新世(500万~200万年前頃)に温暖な気候と安定な地形を維持する期間が続いたために,マサ化がとりわけ広域にわたり激しく起こった.この時期の自然条件は窯業原料となる粘土鉱物の大量生成にも深くかかわったものであり,花崗岩がマサ化したことも粘土生成に拍車をかけることとなった.マサ化した花崗岩類は削られやすく,崩れやすくなり,東濃地方が全体になだらかな丘陵状の地形になっているのはこのためであり,例えは悪いが“砂上の楼閣”という見方もあながち的外れではない.削られた砂が通常の状態で移動しているうちは問題ないが,場所や条件により急激に移動すると土砂崩れとなる.ただし,東濃地方ではどこでも土砂崩れが起きるわけではなく,活断層で急激に上昇した地域や人工改変地で起きる場合が多い.これは,人間の活動が始まる以前に比較的バランスのよい状態にまで崩れてしまっていた大地が,そのバランスを人間によって崩されたために,それを整えるためにさらに崩れざるを得なくなっているためと考えられる.

【関連項目】 地形[3] 東濃地方
災害[1] 土砂災害とは
資源・温泉[3] 窯業原料

【キーワード】 花崗岩,丘陵状地形,土砂崩れ,マサ化

【関連文献】
木宮一邦 (1975) 花こう岩類の物理的風化指標としての引張強度―花こう岩の風化・第1報―.地質学雑誌,81,349–364.
木宮一邦 (1981) 三河高原の風化殻とその形成時期―花こう岩の風化・第3報―.地質学雑誌,87,91–102.

【余談】
自然界のバランスは微妙であり,絶妙である.人間の身体も微量な元素が欠如するだけでとたんに支障をきたす.これも微妙で絶妙なバランスの上に成り立っているからである.最近,「除菌」という言葉がブームのようで,そこには「菌はすべてバイ菌で悪者であり,この世から抹殺されなければならない」という思想があるようであるが,明らかにバランス崩しである.そのうち新たなバランス作りにそのしっぺ返しがでてくるであろう.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (地層と大地の歴史) ―風化,浸食
災害 (土砂災害)


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