岐阜の地学  災害  花崗岩地帯の土砂災害  濃尾震災

災害[4] 濃尾平野の水害と御囲堤
~あっぱれ家康~

 
  
【豆知識】

濃尾平野に流れ込む木曽川,長良川,揖斐川がもつ流域面積はおおよそ4.5:1:1の割合であり,木曽川は他の2川に比べて圧倒的に規模の大きな河川である.木曽川の流域に広く分布する花崗岩類はマサ化して大量の砂 (土砂) を作り出し,それらは大量に運び出す能力をもつ木曽川によって下流へ運ばれる.大量の土砂は濃尾平野で堆積し,おもに堆積岩類が分布する流域を流れている他の2川が作る扇状地よりも圧倒的に大きな木曽川扇状地を形成していく.
濃尾平野では濃尾傾動運動があり,平野の西側ほど沈んでいっているために,濃尾平野へ出た木曽川はしばらく西へ向かって流れる傾向にあり,笠松町付近から南下を始める.その流路は,大きくみると巨大な扇状地の北端から西端へかけての位置で,北あるいは西へ向かって傾斜した斜面上にあたる.これは,愛知県側が高くて岐阜県側が低いことを意味し,木曽川が洪水になれば愛知県側ではなく岐阜県側へ溢れる傾向の強い立地条件であることになる.これは岐阜県側の水が木曽川へ流れ込めないことからもはっきりしているが,それを知ってか知らずか,木曽川の堤防を愛知県側に築き,実質的に岐阜県側に築かせなかった男が徳川家康である.これを御囲堤という.軍事目的という側面もあるが,当時の尾張国を木曽川の洪水から守るために美濃国を犠牲にした施策であった.美濃国側からかなりの皮肉をこめて言うなら,「あっぱれ家康! 」となろう.それほど自然立地条件を巧みに利用した土木工事であった.事実,それ以降は美濃国側だけが水害常習地帯となり,尾張国側ではほとんど水害が無くなった.

【関連項目】 地形[1] 濃尾平野
地形[3] 東濃地方
災害[3] 花崗岩地帯の土砂災害

【キーワード】 御囲堤,花崗岩,木曽川扇状地,水害常習地帯,濃尾傾動運動,濃尾平野,マサ化,流域面積

【関連文献】 なし

【余談】
濃尾平野の水害に「輪中」はつきものである.輪中とは,輪中堤に囲まれた水防共同体であり,その分布は木曽川以西の岐阜県地域にほぼ限られている.愛知県側には木曽川最下流部を除いて存在しない.理由は簡単である.すべて濃尾傾動運動と御囲堤のためである.

『学習テーマ』
小学5年「流水による土地の変化」
小学6年「土地のつくりと変化 (地層) ―河川災害 (水害)


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