岐阜の地学  地形  高山盆地

地形[1] 濃尾平野
~岐阜県の平野~

 
 
  
【豆知識】

日本のおもな平野は,河川が運び込んだ土砂を堆積させることで形成される海岸平野である.土砂がそのまま海へ流れ込むと,海流に運ばれて,例えば海岸線沿いの砂州などの平地を形成することはあっても,平野と呼べるような広さをもったものは形成されない.平野が形成されるためには,海へ流れ込んでしまう前に河川が運び込んだ土砂をためる「容器 (お盆) 」を用意してやる必要がある.容器作りの具体的な中味は平野によって異なるが,いずれの場合も容器の底を下げる運動 (造盆地運動) である.平野は大地の沈降運動がともなわれてこそ形成されるものなのである.
濃尾平野における容器作りは濃尾傾動運動と呼ばれる運動である.これは,濃尾平野の西側ほど沈降し,東側の三河高原側が上昇することで,平野部全体が西へ傾く運動であり,平野の西端には北北西~南南東方向に養老‐伊勢湾断層があり,それを境に西側の養老山地側が上昇している.この運動は数百万年前から始まり,平均して約0.5mm/年ほどの速度で沈降しており,現在も続いている.いつも沈み続けているわけではないから日常の生活ではまったくわからないが,平野の中を流れる木曽三川(さんせん) (木曽川・長良川・揖斐川) が河口に近づくにつれて養老山地側へ偏っていくのはこのためである.
中京圏以外の人々からみると,日本でも有数の広さをもつ濃尾平野は名古屋という大都市を抱える愛知県の平野であり,決して岐阜県の平野とはならない.しかし,濃尾平野では木曽三川が西へ偏ることで,それらが運んでくる土砂を平野の西側ほど厚く堆積させている.平野の形成条件からすれば,真の濃尾平野はその西側部分,すなわち岐阜県側ということになる.

【関連項目】 地形[12] 長良川下流域
地形[14] 養老山地
災害[4] 濃尾平野の水害と御囲堤
断層[8] 養老‐伊勢湾断層

【キーワード】 海岸平野,木曽三川,造盆地運動,沈降運動,濃尾傾動運動,濃尾平野,養老‐伊勢湾断層,養老山地,

【関連文献】
桑原 徹 (1968) 濃尾盆地と傾動地塊運動.第四紀研究,7巻,235–247.

【余談】
濃尾平野は,その誕生から現在の状態に至るまですべて濃尾傾動運動にコントロールされている.当然のこととして,そこで生活している人間にも大きな影響を及ぼしている.交通路,都市の形成・発展,災害など,濃尾平野に生活する者にとって,知らず知らずのうちにコントロールされている.とんでもないことがこの濃尾傾動運動に関係しているかもしれない.

『学習テーマ』
小学6年「土地のつくりと変化 (地層) ―河川,砕屑物
中学1年「大地の変化 (地層と大地の歴史) ―地層の形成過程


岐阜の地学  地形  高山盆地

ホーム岐阜の地学・よもやま話 copyright © Yoshimitsu Koido 2001–2002.
製作・著作: 小井土 由光 (email), ページ作成: 江川 直 (email).