岐阜の地学  地形  濃尾平野  東濃地方

地形[2] 高山盆地
~盆地でない盆地~

 
  
【豆知識】

周囲を山に囲まれた場所であれば,どのように形成された場所でも一般に盆地という.少し川幅が広いだけでも○○盆地と呼んでいるような場所さえある.地形として盆地と呼ぶことは決して間違いではないが,地質学的にみると,最近の地殻運動として盆地を造る沈降運動がないと盆地とは言えない.平野の形成においても造盆地運動がかかわっているように,地質学的には盆地と平野を区別することにあまり意味がない.大まかにみれば,その場所が海に面していれば平野,面していなければ盆地と呼んでおけばよい程度の違いしかないようである.
岐阜県内には盆地状の地形をなす場所がいくつもあるが,そのなかで高山盆地は全国的にも名の知れた盆地の一つであり,高山市街地を中心にかなり広い平地部をもった盆地地形をなす.しかし,高山市街地の宮川河床には基盤の岩石が露出しており,その上には現河川が運んできた土砂をほとんど堆積させていない.このことは堆積物をためる容器作りが最近の地殻運動としてほとんどなされていないことを意味している.北アルプスを挟んで反対側にある松本盆地では,基盤の上に数百mを越える河川堆積物がたまっており,間違いなく容器作りがなされている.この沈降運動は,北アルプスが急激に上昇したために相対的に急激に沈降したとも言えるが,高山盆地側では相対的にも沈降したとは言えず,北アルプスに引きずられるように上昇し,その上昇量が相対的に少なかった場所にすぎない.すなわち,高山盆地は盆地ではないのである.ただし,時代を少しさかのぼるとこの地域にも何枚もの礫層が堆積しているので,“古高山盆地”はあったようである.

【関連項目】 地形[1] 濃尾平野
地形[4] 北アルプス
地形[6] 位山分水嶺
断層[11] 江名子断層・宮峠断層

【キーワード】 北アルプス,造盆地運動,高山盆地,沈降運動,松本盆地

【関連文献】
山田直利・足立 守・梶田澄雄・原山 智・山崎晴雄・豊 遥秋 (1985) 高山地域の地質.地域地質研究報告 (5万分の1図幅) ,地質調査所,111P.

【余談】
疑ってもみないことが否定されると,物事の真相が見えてくる.身の回りにも常識とされることはたくさんある.そのどれかをきちんと否定するのも楽しいかもしれない.見かけが異なっても本質的には同じものという例を見抜くことも楽しいはずである.

『学習テーマ』
盆地の形成,山地の形成


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