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地形[3] 東濃地方
~マサかの山~

 
 
 
  
【豆知識】

岐阜県では,濃尾平野地帯を除いて山間部にあたる地域が大部分を占めている.しかし,山間部とはいいながらも東濃地方には急峻な山岳地帯というイメージはなく,全体になだらかな丘陵状の地形が広がっている.そのなかで比較的急峻な地形を作っているのは,東端にある恵那山 (標高2191m) 周辺やそこから西方へ連なる東西方向の急崖である.これらの地形はいずれも屏風山断層に沿って形成された断層崖であり,その南側の山体 (恵那山地) が上昇している.その上昇量が東部ほど大きいために,恵那山の北側斜面でかなり急峻な地形となっている.しかし,恵那山の山頂部にしても恵那山地にしても,決して急峻な峰を作っているわけではなく,この断層運動がなかったとすると東濃地方には全体になだらかな丘陵が広がっていることになる.
この地方で地形がなだらかな丘陵状になる原因は花崗岩類が広く分布しているためである.花崗岩は地下でマグマがゆっくりと冷えてできた岩石であり,おもな構成鉱物が粗粒で,等粒状・完晶質組織をつくる.こうした組織をもつ岩石が気温の差により岩石表面で膨張と収縮を繰り返えすと,鉱物種ごとに膨脹率が異なるために鉱物粒の間でひずみを生じてバラバラにされ,粗い砂粒 (マサ) を形成する.これをマサ化と呼び,崩れやすくなったり,河川で容易に運ばれやすくなる状態がつくられる.こうした地質上の特性がなだらかな地形を生むと同時に,土砂災害を引き起こしやすい状況をもたらすことを示している.さらには,木曽川や土岐川 (庄内川) によって運び出されたマサは濃尾平野に広大な扇状地を形成し,濃尾平野における人間の生活に大きな影響を及ぼしている.マサ化した東濃の山にまさかの原因があるのである.

【関連項目】 災害[3] 花崗岩地帯の土砂災害
災害[4] 濃尾平野の水害と御囲堤
断層[9] 屏風山断層
岩石・鉱物[2] 苗木・土岐花崗岩
岩石・鉱物[7] 美濃帯堆積岩類
景勝地[6] 鬼岩公園

【キーワード】 恵那山,花崗岩,岩石組織,丘陵,扇状地,断層崖,東濃地方,土砂災害,屏風山断層,濃尾平野,マサ化

【関連文献】
木宮一邦 (1981) 三河高原の風化殻とその形成時期―花こう岩の風化・第3報―.地質学雑誌,87巻,91–102.
中山勝博 (1987) 愛知県猿投山周辺の瀬戸層群と猿投‐知多上昇帯.地球科学,41巻,114–130.

【余談】
「まさかあの時の○○○が,こんな時に (こんなところで) ……」という経験はよくある.要は,“つながっている”ことを再認識する場面である.自然界のつながりは案外に単純であるが,人間界のつながりは複雑である.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (地層と大地の歴史) ―風化,
中学1年「大地の変化 (地震) ―断層,隆起


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