【豆知識】
東濃地方には北東–南西方向に延びる谷が大きく2列に並んでいる.1つは,JR中央本線,中央自動車道,国道19号線の通る幅広い谷であり,もう1つは土岐市南部から山岡町,岩村町へと連なる谷である.これらの谷に挟まれた山塊は
恵那山地と呼ばれ,南西から北東へ屏風山 (標高794m) ,夕立山 (標高727m) ,保古山 (標高969m) ,前山 (標高1351m) といった山が連なり,全体として北東ほど高くなっている.この山地は,北西側の幅広い谷と屏風のように立ちはだかる急崖で接しており,ここに
屏風山断層が走っている.この急崖はその断層崖と考えてよく,北東へ向うほど比高差が大きくなり,
垂直ずれ断層の落差が大きくなっている.恵那山地と南東側の谷とは明瞭な落差を示さないが,その谷とさらに南東側の山塊との間には
恵那山断層が走っている.大雑把にみれば,屏風山断層と恵那山断層に挟まれた恵那山地が両断層の運動により隆起したと考えてよい.
屏風山断層は
逆断層として特徴づけられ,恵那山地側が南東から北西へ乗りあげている.その隆起量が第四紀初期 (200万~100万年前) に堆積した
土岐砂礫層の基底面の高さにより明瞭に示される.すなわち,土岐砂礫層は逆断層運動が始まる以前にこの地域に広く堆積し,その後,断層運動により恵那山地の上と北西側の谷との間で落差を生じていき,その落差は北東部ほど大きく,現在では250~1000mの高度差となっている.恵那山断層も似たような傾向を示し,この地域は全体として北東ほど標高が高くなり,その結果として恵那山 (標高2190m) が形成されたことになる.東濃地方における大きな河川は基本的に北東–南西方向に流れており,これらの
断層やそれらから派生する断層に強く影響されている.