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岩石・鉱物[11] 壷石
~風変わりな自然の造形物~

 
 
 
  
【豆知識】

東濃地方の大地は,中生代のジュラ紀までに形成された美濃帯堆積岩類,白亜紀後期~古第三紀に形成された花崗岩類 (苗木花崗岩,土岐花崗岩など) と濃飛流紋岩の三者でおもに構成されており,その上に新第三紀の中新世に形成された瑞浪層群が覆っている.鮮新世から第四紀の更新世前期になって,広く東海地方にできた東海湖が東濃地方にも広がってきて,これらの岩石や地層を覆って東海層群が堆積した.東濃地方では,これを瀬戸層群と呼び,下位の土岐口陶土層と上位の土岐砂礫層からなる.前者は多治見,土岐地域を中心に分布し,重要な窯業原料として採掘されているものである.後者は丘陵地の高いところにかなり普遍的に分布しており,平坦な地形面を形成している.含まれる礫が周辺に分布する美濃帯堆積岩類,花崗岩類,濃飛流紋岩などからなり,チャート礫を除いてすべて風化して,スコップでも簡単に削られるほど軟らかくなっていることを特徴としている.こうした礫を通称“くさり礫”という.この礫層には壷石(つぼいし)と呼ばれる変わったものが産出する.
壷石は,地下水などに溶け込んだ珪酸 (SiO2) 成分や褐鉄鉱をセメント材料として小石が団塊状に固められたものである.径20~30cmで球状をなして内部が空洞になっているものでは,その中に粘土塊が入っていると音を発して鳴石と呼ばれるものになる.周囲の小石を1個はずして花瓶がわりに使われることもある.板状をなすものは鬼板と呼ばれる.土岐市神明峠付近から産する壷石は国の天然記念物に指定されている.

【関連項目】 化石[10] メタセコイア
資源・温泉[3] 窯業原料

【キーワード】 鬼板,くさり礫,瀬戸層群,天然記念物,東海湖,壷石,土岐口陶土層,土岐砂礫層,鳴石,窯業原料

【関連文献】
中山勝博 (1985) 岐阜県土岐市における瀬戸層群の堆積盆地.地団研専報,29号,119–129.
陶土団研グループ (1982) 岐阜県瑞浪市南部の瀬戸層群.地団研専報,24号,143–155.
陶土団研グループ (1985) 東海湖東縁部における陥没盆地―岐阜県中津川市附近の瀬戸層群―.地団研専報,29号,101–117.

【余談】
土岐砂礫層が分布している平坦な地形面はみごとにゴルフ場に化けている.東濃地方でゴルフ場のあるところには土岐砂礫層ありと思ってもよいほどである.花崗岩のマサ化によるなだらかな地形もそれを加速させているが,作りやすいからといってこれほどまで作ってしまってよいのであろうか.理由を自然の立地条件に押しつけてしまったら,自然がかわいそうである.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (地層と大地の歴史) ―風化


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