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化石[10] メタセコイア
~生きた化石~

 
 
  
【豆知識】

養老山地と鈴鹿山脈との間を流れる牧田川流域に広がる丘陵地は,新第三紀の鮮新世から第四紀の更新世にかけての時期 (約300万~約100万年前) に堆積した東海層群と呼ばれる地層群からなる.この地層群は東海湖と呼ばれる湖に堆積したもので,岐阜県下における東海湖はこの地域から垂井町の南宮山付近にも広がり,さらには東濃地方では瀬戸層群と呼ばれて,陶土層や砂礫層として分布する.東海湖は,おおよそ現在の伊勢湾の北部地域を中心に広がり,時代とともに南西や北西へ向かって移動していった.
西濃地方における東海層群は,東海湖としては最後の水域になった場所であり,おもに礫層,砂層,粘土層などからなり,褐炭層や火山灰層も挟まれる.化石が豊富に含まれ,オオバタグルミ,メタセコイア,ヒシ,ハシバミなどの植物の球顆や材の化石がたくさん含まれている.また,上石津町多良ではアカシゾウの化石も発見されており,東海湖の末期に残った沼地のまわりにメタセコイアの生い茂る森林が広がり,アカシゾウなどの動物が生息するような豊かな自然環境があったようである.メタセコイアは,土岐市の瀬戸層群中から発見された小枝と球顆から現生種のセコイアと異なる絶滅種とされたが,その後,中国四川省で現生種が発見されたことで「生きた化石植物」となった.現在,メタセコイアは成長の早い落葉高木として各地にみられるが,中国での現生種がアメリカを経て移入されたものである.

【関連項目】 岩石・鉱物[11] 壷石

【キーワード】 アカシゾウ,生きた化石,植物化石,東海湖,東海層群,メタセコイア

【関連文献】
宮村 学・三村弘二・横山卓雄 (1976) 彦根東部地域の地質.地域地質研究報告 (5万分の1地質図幅) ,地質調査所,49P.
塚越 実 (1992) 生きている化石―三木 茂博士によるメタセコイア属の設立と中国での現生種の発見―.岐阜県植物研究会誌,9号,32–45.

【余談】
「生きた化石」とは矛盾した言葉などと言ってみてもはじまらないが,内容としてはじつに雰囲気の伝わる言葉である.かつて全盛期を誇った生物がいまや細々と生き延びている姿は,環境の違いを乗り越えて懸命に生きているともとれるし,それに順応してしたたかに生き抜いているいるともとれる.人類の将来はどうであろうか.すでに生きた化石としてしたたかに生き延びているようにも思えることがあるが.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (地層と大地の歴史) ―化石 (新生代第三紀)


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