【豆知識】
既存の物質に珪酸(SiO2) 成分が付加されたり,逆に既存の物質から珪酸以外の成分が溶脱されたことで珪酸成分の多い物質に変化する作用を一般に珪化作用という.これは地中にある岩石にも化石にも起こる現象であり,化石の場合には,珪化作用を起こしたことで保存されやすくなっている例も多い.地層中に埋まった樹木の細胞内や細胞壁に珪酸がしみ込んで珪化作用を起こしたものを珪化木という.置き換えられた珪酸は,結晶として固定されると石英になるが,実際にはほとんど非結晶のオパールやメノウの形で固定されている.いずれにしても硬い物質として固定されているので,保存されやすくなる.樹木の年輪や組織がきれいに残されているため普通の樹木のように見えていながら,石でできた木であるから,手に持ったときは予想外に重い印象をもつ.
美濃加茂市山之上町北部には,先端がまだ地層中に埋まっているため全長は不明であるが,少なくとも11m以上の長さをもつ横倒しの珪化木があり,県の天然記念物に指定されている.このほかに直径2m近くに達する立ち木や直立樹幹群の珪化木もみられる.この地域に広く分布する地層はおもに火山活動によってできた
蜂屋累層であり,太古の森林をつくっていた樹木が火山噴出物に埋もれ,それに珪化作用を受けたことで多量の珪化木が作られた.日本でも有数の珪化木の産地となっている.このほかに,同じ
瑞浪層群に属する
中村累層の中からも大量の直立した珪化木樹幹群が木曽川河床からみつかっており,地層中で圧力を受けて変形したままの形で珪化木になっているものもみられる.