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化石[8] 平牧動物化石群
~哺乳類化石の宝庫~

 
 
  
【豆知識】

美濃加茂市から可児市へかけての地域に分布する瑞浪層群は,瑞浪地域や岩村地域に分布する同層群と異なり,湖に堆積した地層だけからなる.下位から蜂屋累層,中村累層,平牧累層の3層に分けられており,約2200万年前から約1700万年前の時期に形成された.これらの地層には多くの化石が含まれ,瑞浪層群全体に共通する特徴をもつが,とりわけ大型動物化石と植物化石が多く含まれる.これらの化石は,大きな湖の周囲に生活していた動物や繁茂していた植物を表わしており,当時の様子を知るうえで貴重な資料である.
大型動物化石は平牧動物化石群と呼ばれ,日本でも有数の哺乳類化石の産地として知られている.中村累層と平牧累層からゾウ,サイ,バク,ウマ,シカ,リスなどいろいろな種類の哺乳類化石が産出している.美濃加茂市の今渡(いまわたり)ダム周辺の河床からは,サイの仲間に属する化石として,脛骨化石や下顎骨化石のほかに足跡化石が発見されており,これは哺乳類の足跡化石としては日本最古のものである.
植物化石は落葉広葉樹からなる豊かな緑が広がっていた様子をうかがわせるものが多い.蜂屋累層と中村累層からメタセコイア,ブナ,ハンノキ,ニレ,カエデ,ウリノキなどを産出し,現在よりもやや冷温で,より内陸的な気候を示している.平牧累層からはドロノキ,ハンノキ,ケヤキ,フウ,バロチアなどが含まれ,次第に温暖化していったと考えられている.

【関連項目】 化石[2] 瑞浪層群

【キーワード】 植物化石,中村累層,蜂屋累層,平牧動物化石群,平牧累層,瑞浪層群

【関連文献】
伊奈治行 (1981) 瑞浪層群の化石1.可児・瑞浪盆地の植物.瑞浪市化石博物館専報,2号,1–20.
奥村 潔・岡崎美彦・吉田新二・長谷川善和 (1977) 可児町産の哺乳動物化石.平牧の地層と化石,21–45,可児町教育委員会.

【余談】
瑞浪層群はどこでも豊富に化石を産することから,かなり詳細な古生物学な研究が進められてきた.その一方で,化石を含む堆積物自体の研究はあまり十分になされてこなかったのが実状である.こうしたことは地質学の分野ではよくあることであり,逆にいえば,これからも研究されなければならないことはたくさんある.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (地層と大地の歴史) ―化石 (新生代第三紀)


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