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化石[7] モノチス
~いっときだけ繁栄したホタテ貝~

 
  
【豆知識】

貝殻は化石として残りやすい.有機物からなる生体部分は死後に分解されてなくなってしまうが,無機物からなる貝殻は生体部分に比べれば分解されにくく,残る確率は高くなる.骨にしても歯にしても同じ理屈から化石として残りやすくなる.ただし,必ず残されるわけではなく,一定の条件が揃わないと残りにくい.その条件は古い時代のものほど厳しくなる.当時の生物すべてが化石になっていたら大変なことになり,圧倒的大部分は分解されてなくなっており,化石として残されたものは奇跡に近いと言ってもよい.そうなると,かなりの個体数が繁殖していないと化石として残りにくいことになり,化石として産出することは地球上あるいは一定地域にかなりの数で繁栄していたことを意味する.ちょうど現在の地球上における人間のようにのさばっていたということである.
ある特定の時期だけ汎地球規模でのさばってくれると,その化石が得られるだけで時代が決められる.そうした化石を示準化石という.のさばる期間が短いほど時代の特定に役立ち,それだけ重要な化石となる.春日村南部にある押又谷には,きわめて限られた範囲だけにモノチスという貝化石が密集して産出する.この貝は俗称“皿貝 (さらがい) ”と呼ばれ,薄い殻をもったホタテ貝の仲間である.この貝は中生代の三畳紀後期 (約2億2000万年) だけに世界中に棲息したので,この時期を特定できる有力な示準化石となっている.ホタテ貝に似た放射状の筋をもち,わかりやすい特徴をもつ示準化石であるが,どこからでも産出する化石というわけにはいかず,岐阜県内には美濃帯堆積岩類の中に三畳紀後期を示す地層がありながら,この化石は春日村以外から見つかっていない.最近では,放散虫化石による時代決定が普遍的になされるようになり,モノチス貝だけが頼りというわけではなくなったため,有効な示準化石も出番がなくなったようである

【関連項目】 なし

【キーワード】 三畳紀後期,示準化石,モノチス

【関連文献】
Ando,H.(1987) Paleobiological study of the Late Triassic Bivalve Monotis from Japan. Univ.Museum., Univ.Tokyo,Bull., 30, 110P.

【余談】
貝化石に限らないが,動物化石をみるときに「食べたら美味いか? 」という設問をもってのぞむと別の興味がわく.モノチスの中味はわからないが,ホタテ貝のイメージから美味しそうな貝柱が付いていたのであろうと勝手な想像をするのも楽しいものである.本当はどうなっていたのであろうか.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (地層と大地の歴史) ―化石 (中生代)


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