岐阜の地学  火山  木曽川泥流  枕状溶岩

火山[17] 水中自破砕溶岩
~湖の水とはげしく反応~

 
  
【豆知識】

火山の溶岩が地表に流れ出ると,空気によってまず表面が冷やされ,次第に内部に向かってゆっくりと冷やされて固化していく.これが水中になるとかなり異なる現象をおこす.熱く焼かれたフライパンを空気中に放置して冷やす方法を水で冷やす方法に変えるのと似ている.水で冷やす場合でも,コップの水をかける程度の冷やし方もあれば,水槽の中にまるごと浸けて冷やす方法もある.前者では水が激しく飛び散って火傷をしたりする場合もある.後者では最初だけジュッと音をたてるが,大きな変化はみられない.灼熱の溶岩が水に触れた場合にも,水と溶岩の量比でその反応が異なる.玄武岩質溶岩の場合には,水: 溶岩の比がおおよそ3:10の時に両者が最も激しく反応するとされており,溶岩が破砕されてバラバラにされる.このようにして水冷破砕された溶岩を水中自破砕溶岩という.破砕された材料はすべておなじ溶岩であるから,すべておなじ成分の破片だけからできている砕屑岩が作られる.細粒の粉状物質と粗い岩片が混ざった火山堆積物を一般に凝灰角礫岩というが,普通は粉状物質が火山灰であるのに対して,水中自破砕溶岩では溶岩の細かい破片となる.どちらも見かけはよく似ているが,噴出環境も形成過程もまったく異なる岩石である.
美濃加茂市の北部から木曽川沿いにかけての地域には,瑞浪層群の最下部を構成する蜂屋累層が分布する.この地層は湖の中で噴出・堆積した安山岩質玄武岩質の火山岩類で特徴づけられ,それらが大量の水中自破砕溶岩を形成している.湖という条件が噴出した溶岩と適度な水量で接触させることになり,水中自破砕溶岩がもたらされたと考えられている.水中で噴出したことにより,火山岩類は多くの場所で熱水変質作用を起こし,大量の珪化木を作ったり,沸石という変質鉱物を全体に生じさせている.

【関連項目】 火山[18] 枕状溶岩
化石[9] 珪化木

【キーワード】 凝灰角礫岩,珪化木,玄武岩質溶岩,水中自破砕溶岩,熱水変質作用,蜂屋累層,沸石,瑞浪層群,水: 溶岩比

【関連文献】
野村隆光 (1992) 岐阜県南東部,中新統蜂屋累層の層序―瀬戸内中新統初期の火成活動―.瑞浪市化石博物館研究報告,19号,75–102.

【余談】
火山活動のスタートは地下にあるマグマである.それがまったく環境の異なる地表という世界に出てくることで波乱に満ちた一生を送ることになる.まずはマグマから出てくる状態が固体か液体かで生成物が異なり,同じ状態で出てきても地表での移動経路によってまったく異なる生成物をつくり,最終的に落ち着く場所もさまざまである.火山灰のように他人任せもあれば,火砕流のように挑戦的なものもあり,自破砕溶岩のように自虐的なものもある.人間の一生と似たところがある.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (火山と火成岩) ―火山活動 (水中)


岐阜の地学  火山  木曽川泥流  枕状溶岩

ホーム岐阜の地学・よもやま話 copyright © Yoshimitsu Koido 2001–2002.
製作・著作: 小井土 由光 (email), ページ作成: 江川 直 (email).