【豆知識】
火成岩類を構成する鉱物類は
マグマが冷えることで生まれる.マグマがほぼそのまま地下で固結した
花崗岩が地表に露出すると,含まれている鉱物にとっては,少なくとも地表の常温常圧条件は鉱物の高温高圧という生成条件とは異なり,かなり不安定な条件下となる.人間も不安定な状態 (ストレス状態) に置かれると,それを解消しようとする行動にでる.鉱物も同じように
ストレス解消への道をたどり,地表の温度圧力条件下で最も安定な状態になろうとして別の鉱物に変わろうとする.ただし,その変化のスピードはかなり遅いのが普通であり,10万年,100万年という時間単位で起こる.
花崗岩類に最も多く含まれている鉱物は長石類である.この長石類が地表で安定な状態になろうとして生成された鉱物が粘土鉱物である.われわれの日常生活に欠くことのできない陶磁器の原材料である粘土は粘土鉱物からできており,それはマグマから生まれた長石類の“なれの果て”である.東濃地方において世界に誇る良質の粘土が大量に得られるようになった理由は,長石類を多くふくむ花崗岩類が広く分布すること,それが新第三紀の鮮新世 (約500万~約200万年前頃) にストレス解消作用を盛んに受けるような気候条件下に長時間さらされたこと,大量に形成された粘土が堆積できるような湖 (東海湖) が同時に形成されていたことなどの条件が重なったからである.“なれの果て”のゴミ捨場まで用意してくれた自然界の仕組みを人間は巧みに利用することで便利な道具を得たことになるが,それをただ漫然と使っているわけではない.陶磁器は必ず粘土を焼くことで作られ,かなりの熱エネルギーを必要とする.この焼くという工程は粘土鉱物を一瞬にして長石類に戻しているのであり,焼きを入れてやらないとやはり“なれの果て”は使い物にならないのである.そのために大量の樹木を伐採して得た薪を燃やしてきた.莫大なエネルギーを使って (場合によってはすさまじい環境破壊を行なって) ,自然界の流れに逆らってまで生活の道具を得ていることを忘れてはならない.