【豆知識】
一定の成分が溶け込んでいれば低温でも立派な温泉であり,それらを通俗的に「冷泉」とか「鉱泉」と呼んでいる.温泉にとって温度は必ずしも必要条件ではなく,1℃の温泉もあり得る.東濃地方には多くの鉱泉があり,決して集中して分布するわけではないが,昔から親しまれてきた有名な鉱泉が各所に分布する.これらの鉱泉のほとんどは放射能泉と呼ばれるもので,一定の成分にあたるものが放射性元素である.具体的には1kg中にラドン20×10−10キュリー以上あるいはラジウム10−8mg以上であれば立派な温泉となる.実際にはもっと他の放射性元素も含まれており,東濃地方の地下ではこうした放射性元素が地下水に恒常的に供給されるシステムがあることになる.
東濃地方の大地を作っている大部分の岩石は花崗岩類である.それらのうち,
苗木花崗岩と
土岐花崗岩は放射性元素を多く含み,本来は無色透明の石英が黒~暗灰色になるなど,放射性元素を多く含むことに伴ういくつかの特徴もみられる.放射性元素は水に溶けやすい性質を持っており,それらを含む鉱物から地表水あるいは地下水へ比較的容易に溶けだしていく.ただし,人体に影響を及ぼすような量ではないので安心してよい.東濃地方では大地を作っている花崗岩類そのものに比較的多くの放射性元素が含まれ,それが水に溶けやすい性質をもつので,どこにも放射能泉があってもよさそうである.しかし,花崗岩類は全体としてほぼ均質な岩体であるため,普通の状態では地下水脈ができにくい.ただ,
断層があると岩石が破砕されて水の通りやすい環境が作られるので,東濃地方では断層沿いに湧き出した地下水がそのまま鉱泉となっている例が多いようである.