岐阜の地学  資源・温泉  マンガン鉱床  下呂温泉

資源・温泉[8] 温泉とは
~井戸水にすぎない~

 
「温泉法」(昭和25年4月1日施行)による温泉の定義
[第二条] 地中から湧出する温水,鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で,別表に掲げる温度または物質を有するもの.
(別表)
1. 温度(温泉源から採取されるときの温度)25℃以上
2. 物質(以下に掲げるもののうち,いずれか1つ)
物質名含有量(1kg中)
溶存物質(ガス性のものを除く)総量1,000mg以上
遊離炭酸(CO2)250mg以上
リチウムイオン(Li+)1mg以上
ストロンチウムイオン(Sr2+)10mg以上
バリウムイオン(Ba2+)5mg以上
鉄イオン(Fe2+,Fe3+)10mg以上
マンガンイオン(Mn2+)10mg以上
水素イオン(H+)1mg以上
臭素イオン(Br+)5mg以上
ヨウ素イオン(I+)1mg以上
フッ素イオン(F+)2mg以上
ヒドロヒ酸イオン(HAsO42+)1.3mg以上
メタ亜ヒ酸(HAsO2)1mg以上
総硫黄(S)1mg以上
メタホウ酸(HBO2)5mg以上
メタ珪酸(H2SiO3)50mg以上
重炭酸ソーダ(NaHCO3)340mg以上
ラドン(Rn)20/100億キュリー以上
ラジウム塩(Raとして)1/1億mg以上
【豆知識】
温泉は「地下から涌き出てくる熱湯」という印象が強いために,地球の内部に蓄えられていた液体が初めて地表に現れたものと思われているようである.しかし,温泉水は雨や雪として地表に降った水が地中にしみこんだ地下水にすぎず,それが深部にまでいって温められたり,いろいろな成分を溶かし込み,再び地表付近に戻ってきたものである.法律では,地下水のうち25℃以上の温度をもつか,決められた成分が一定以上含まれているのどちらかの条件があれば温泉と呼べることになっている.生活用水として使っている井戸水にも何らかの成分が溶け込んでいるが,普通はかなり浅い場所から得ているために溶け込む成分の種類や量に限りがあり,かえって人為的な有害物質の溶け込みのほうが深刻である.深部まで循環した水であれば,それなりの種類と量の成分を溶かし込む機会が多くなるので温泉となりやすい.

活火山の地下には熱いマグマがあるので,容易に25℃以上の地下水が得られやすい.温泉が火山と深くかかわっているようにみえるのはこのためであり,火山は風呂の釜焚き役をしているだけである.地球自身も釜焚き役をしている.地球の内部から伝わってくる熱により地下へ向かって100mにつき平均約3℃の割合で温度が上昇しており,これを地温勾配という.地表で15℃の水でも,地下1000mでは約45℃のお湯になる.そこにそれなりの量が得られる地下水脈があれば,ボーリングを掘って温泉が得られることになる.岐阜県には下呂温泉奥飛騨温泉郷など火山がらみの温泉も多いが,火山とは無関係な温泉も多い.東濃地方の鉱泉などはその典型であり,近年掘られた温泉もすべて地下深部からの井戸水である.

【関連項目】 資源・温泉[9] 下呂温泉
資源・温泉[10] 東濃地方の温泉
資源・温泉[11] 最近の温泉
資源・温泉[12] 奥飛騨温泉郷

【キーワード】 温泉,活火山,循環水,地温勾配,地下水,25℃以上,溶解成分,マグマ

【関連文献】
岐阜県 (1979) 岐阜県における温泉の概要.岐阜県.278P.

【余談】
温泉に医学的な効果があることはよく知られている.必ずといってもいいほど温泉には効能書きが掲げられている.含有成分や温度など,温泉として備えている条件のいずれかが人間の体にプラスに作用するのであろう.わずかなことに反応してしまうほど人間の体が繊細であることを示しているが,温泉が持つ最大の効能はリラックスという精神的な効果ではなかろうか.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (火山と火成岩) ―火山 温泉


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