岐阜の地学  資源・温泉  温泉とは  東濃地方の温泉

資源・温泉[9] 下呂温泉
~釜焚き役はやはりマグマ~

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【豆知識】

火山国日本では温泉には火山がつきものであると考えがちである.確かに火山のそばに温泉がある例は数え切れないほどあり,温泉を火山噴出物の一部と理解してしまうぐらいである.しかし,温泉は決して地球の内部から湧き出してきたものではなく,原材料は降雨・降雪であり,火山を噴出させたマグマが釜焚き役をしているだけにすぎない.温泉と火山が結びつけられてしまうために,逆に「火山もないのになぜ温泉が出るの? 」という疑問がしばしば発せられる.天下の名湯・下呂温泉もしばらく前まではそのように言われていた温泉である.
傷ついたシラサギが飛騨川の河原に涌き出た温泉につかって傷を治したと言い伝えられている下呂温泉は,現在では河原に涌き出ているわけではないが,掘削深度300m以内の井戸から50℃にも達する温泉を得ており,どうしても地表近くに釜焚き役をおかなければならない.しかし,すぐそばにある湯ヶ峰火山は,周囲に温泉をともなう御嶽山焼岳のような現役の火山ではなく,種火も残っていないような古い役不足の火山であると考えられていた.ところが,最近の年代測定によって10万~12万年前という予想以上に若い年代の活動時期を示すことが明らかになり,この火山の地下にはまだ冷えきっていないマグマが残されている可能性が強くなった.10万年というオーダーは活火山としてごく普通の年齢であり,地表付近で高温の温泉を湧出させる釜焚き役を置く必要がある下呂温泉では,湯ヶ峰火山をもたらしたマグマがそれを担っていると考えざるを得ないのである.

【関連項目】 資源・温泉[8] 温泉とは
火山[4] 湯ヶ峰火山

【キーワード】 温泉,火山,下呂温泉,マグマ,湯ヶ峰火山

【関連文献】
山田直利・柴田 賢・佃 栄吉・内海 茂・松本啓一・高木秀雄・赤羽久忠 (1992) 阿寺断層周辺地域の火成岩類の放射年代と断層活動の時期.地質調査所月報,43,759–779.
脇田浩二・小井土由光 (1994) 下呂地域の地質.地域地質研究報告 (5万分の1地質図幅) ,地質調査所,79P.

【余談】
“日本三大○○”という宣伝文句がいろいろなものにあるが,温泉の場合には,下呂,草津,有馬が該当しているようである.江戸時代初期の蘭学者が名指しで挙げたのに由来しているらしい.規模,効能,歴史等々,比較するものはいろいろあるが,何が根拠なのかはよくわからない.他の温泉にない何かがあるのであろう.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (火山と火成岩) ―火山 温泉


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