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火山[7] 巌立
~異常に長距離流れた溶岩流~

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【豆知識】

御嶽山は,有名な民謡『木曽節』に謡われていることもあり,どちらかというと長野県の山というイメージが強いが,立派な岐阜県の山でもある.ただし,御嶽山という名称をもつ具体的な峰は存在せず,火山体としての山体全体を指すときに使われている言葉であり,なぜかこれ以外の名称には『御岳』と書く.まさしく“オンタケサンはなんじゃらほい”である.御嶽火山の活動は,20万~30万年前に始まった古期御嶽火山と約8万年前に始まった新期御嶽火山という2つの時期からなる.そのうち,新期御嶽火山の約54,000年前に噴出した安山岩質溶岩流の末端が小坂町にある厳立であり,高さ約40m,幅約120mにおよぶほぼ垂直に切り立った大岩壁として県の天然記念物に指定されている.大岩壁にみられる垂直方向の割れ目は,その場所で溶岩が冷えて収縮するときにできたものであり,柱を並べたように見えることから柱状節理と呼ばれる.
溶岩はその組成によって粘性を変え,粘性が低いと斜面を川のように流れ下るが,高いとまったく流れることができない.安山岩質の溶岩流は中間的な粘性を示し,斜面を流れ下るが,あまり火口から遠くまで流れるようなことはない.厳立のある場所は頂上付近から谷にそって約15kmも流れ下った位置にあり,しかもこの溶岩はかなり狭い峡谷の中だけを流れ下った.このため,ある程度の粘性があってもかなり短時間で長距離を流れることができたようで,御嶽火山の溶岩流の中でも異常に長い距離を流れ下っている.

【関連項目】 火山[1] 御嶽山1979年噴火
火山[5] 上野玄武岩
災害[2] 岐阜県の土砂崩れ

【キーワード】 安山岩質溶岩流,御嶽山,厳立,古期御嶽火山,新期御嶽火山,柱状節理,天然記念物,崩壊

【関連文献】
山田直利・小林武彦 (1988) 御嶽山地域の地質.地域地質研究報告 (5万分の1地質図幅) ,地質調査所,136P.

【余談】
厳立の岩壁は1999年に大規模に崩れた.ここのセールスポイントは柱状節理であるから,割れ目を使って徐々に崩れていくようにできている.だからこそ大岩壁ができたのであって,崩れなかったら厳立はない.今後も崩れることで壁の位置は上流側へ移動していくが,溶岩の内部には柱状節理ができているはずであるから,位置は変っていっても厳立の景観はしばらくなくならないはずである.

『学習テーマ』
小学6年「土地のつくりと変化 (火山) ―火山噴出物 (溶岩)
中学1年「大地の変化 (火山と火成岩) ―火山噴出物 (溶岩)


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