岐阜の地学  火山  巌立  火山灰の正体

火山[8] 飛騨テフラ
~変な客人~

 
 
 
  
【豆知識】

火山が噴煙を噴き上げると,日本では上空に偏西風が流れているため,火山の東側に火山灰がまき散らされる.こうした火山灰層を降下火山灰層あるいはテフラと呼んでいる.テフラという言葉は空中を移動して地表に堆積した火山砕屑物を指すが,日本では細かい火山灰に限って使われることが多い.代表的な例は関東平野に厚く降り注いだ関東ロームと呼ばれる降下火山灰層であり,おもに富士・箱根火山や浅間火山から飛んできたものである.しかし,日本のどこにでも火山があるわけではないので,降下火山灰層がどこにでもあるというわけにはいかない.とりわけ岐阜県地域は,関西地方に火山がないために降下火山灰層がほとんどみられない地域にあたっている.県内で降下火山灰層がまとまって分布するのは高山盆地周辺だけである.
高山盆地周辺でみられる降下火山灰層は飛騨テフラと呼ばれ,大きく4層に区分されている.上位の2層は中国地方の大山火山起源と南九州の姶良火山起源であり,全国的に広く分布していることもあり,噴出源が明らかなものである.下位の2層は『広殿軽石層』,『高山軽石層』と呼ばれ,いずれも噴出源について議論のある火山灰層である.火山灰層はあくまでも遠来のお客様であり,分布していることがそのままそこでの火山活動を意味するわけではない.ただ,1枚の火山灰層で広域にわたり同時間面を形成してくれるので,その噴出源と特徴を明確にすることで離れた地点でも同じ物であることを決めてやる必要がある.現時点では,広殿軽石層は白山加賀室火山から,高山軽石層北アルプスの槍ヶ岳付近にある水鉛谷給源火道と呼ばれる場所からそれぞれ来たものと考えられている.いずれも比較的近い場所からの客人となるが,後者については西方からではなく東~北東方からの変った客人である.

【関連項目】 火山[9] 火山灰の正体
火山[14] 白山火山
火山[20] 上宝・奥飛騨火砕流堆積物

【キーワード】 上野平,加賀室火山,降下火山灰層,水鉛谷給源火道,高山軽石層,高山盆地,テフラ,飛騨テフラ,広殿軽石層,噴煙,噴出源

【関連文献】
下畑五夫 (1988) 飛騨のテフラ.「飛騨の大地をさぐる」,43–60.教育出版文化協会.
岩田 修 (1990) 飛騨テフラの噴出源を求めて.岐阜県地学教育,27,30–37.
岩田 修 (1996) 飛騨テフラの噴出源を求めて (2) ?特に磁鉄鉱からみて,高山層は奥飛騨火砕流堆積物に対比できるか? .岐阜県地学教育,33,33–52.
原山 智 (1990) 上高地地域の地質.地域地質研究報告 (5万分の1地質図幅) ,地質調査所,175P.

【余談】
世の中ではお客様は手土産を持ってくるのが常である.飛騨テフラに厚く覆われている丹生川村の上野平では,良好な農地土壌という手土産をいただいたことで高冷地野菜の産地となっている.

『学習テーマ』
小学6年「土地のつくりと変化 (火山) ―火山の噴出物 (火山灰)
中学1年「大地の変化 (火山と火成岩) ―火山噴出物 (火山灰)


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