岐阜の地学  資源・温泉  東濃地方の温泉  奥飛騨温泉郷

資源・温泉[11] 最近の温泉
~まさに“水もの”~

【豆知識】

1990年前後であったか,当時の総理大臣の掛け声により「ふるさと創生事業」なるプロジェクトが全国的に進められた.多くの市町村で1億円という大金がいろいろな使われ方をしたが,比較的多かった事業が温泉掘削であった.岐阜県でもかなりの市町村で温泉が掘られ,どこでも1億円を使って約1000mの掘削を行ない,それによって湧出した温泉を利用していろいろな施設が誕生している.掘削費用は深くなるほど高くなるのは当然であるが,おおよそ10万円/mの見当で計算すると費用の目途がつく.温泉に1000mの深さが要求される理由は,地下へ向かって約3℃/100mの地温勾配があり,地表で15℃の水も地下1000mでは約45℃の手ごろな温度のお湯になるからである.たとえ温度が低くても1000mの深さにまで達した地下水にはいろいろな成分が溶けこむ機会が増えるはずであり,1000mという深さは温泉を得るための1つの目安になる値である.
問題はその深さに地下水脈がなければならないが,地下深くにおける水脈は大地の破壊面である断層を使っていることが多く,断層がそこにあれば比較的容易に地下水脈が得られる.しかし,地表面で仮に垂直になっている断層面があったとして,それがそのまま地下へ向かってまっすぐ伸びている保証はなく,徐々に傾いていく場合もある.どこでどれだけの深さまで掘削するのかが求められている温泉掘削では,いろいろなデータをもとに地下の様子を総合的に判断して掘りだすことになる.しかし,温泉がでるまでは結果がわからない.文字通り“水もの”に1億円をかけているのが真相である.

【関連項目】 資源・温泉[8] 温泉とは

【キーワード】 温泉掘削,地温勾配,地下水,断層,ふるさと創生事業

【関連文献】 なし

【余談】
1市町村に1温泉とまではいかないが,あちこちにかなりの数の温泉が生まれている.ちょっと深い井戸を掘っただけと考えればそれほど騒ぐことでもないと思われるが,温泉と名乗るだけで途端に経済効果とやらが変わるのであれば,温泉の有無は大事なことなのであろう.人間というのはわずかな違いに意義を見出すのが得意なようである.

『学習テーマ』
温泉


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