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資源・温泉[12] 奥飛騨温泉郷
~熱源は火山だけに限らず~

 
  
【豆知識】

岐阜県の北東端にあたる北アルプスの麓,蒲田(がまた)川や高原(たかはら)川沿いに点在する温泉は総称して奥飛騨温泉郷と呼ばれ,新穂高・新平湯・平湯などの温泉群からなる.いずれも泉温が高く,涌出量もかなり多いことで特徴づけられ,岐阜県内で最も規模の大きい温泉群を形成している.これらの温泉群は焼岳火山の山麓を取り囲むように分布し,温泉が火山に深く関係する現象であるとの考えもあって,温泉の熱源をそのマグマに求める考えが一般的であった.これは決して間違いとは言えないが,北アルプスに分布する花崗岩類の中に100万年前ほどの極めて若い時期に形成された滝谷花崗閃緑岩があることが明らかにされてから,北アルプスの地下にマグマ自体が,あるいはマグマから固結したばかりのまだ熱い状態の火成岩体が比較的浅い位置に横たわっている可能性がでてきた.
小説「黒部の太陽」で有名になった“高熱隧道”は,北アルプスを貫くトンネル工事中に高熱の熱湯が噴出したことからその名があるが,北アルプスの地下にまだ熱い状態の花崗岩体が潜んでいることを示す証拠の1つにあげられている.そこから噴き出る熱湯と奥飛騨温泉郷の温泉とは本質的に同じものと考えてもよい.こうした岩体の貫入が現在の北アルプスの急激な上昇運動の原因とも考えられており,蒲田川沿いに作られた露天風呂からの北アルプスの眺めは,若い花崗岩体が沸かした温泉につかって,それが上昇させた山を望んでいることになる.

【関連項目】 資源・温泉[8] 温泉とは
岩石・鉱物[3] 滝谷花崗閃緑岩
地形[4] 北アルプス

【キーワード】 奥飛騨温泉郷,北アルプス,高熱隧道,滝谷花崗閃緑岩,焼岳火山

【関連文献】
原山 智 (1990) 上高地地域の地質.地域地質研究報告 (5万分の1地質図幅) ,地質調査所,176P.

【余談】
日本には火山に関係のないと思われる温泉がかなりある.その中でも古くから知られている温泉は,すべて地表に涌出していたからその存在がわかったはずであり,かなり浅いところに火山ではない熱源を想定してやることになる.はたしてその熱源は何であろうか.少し古い新第三紀の深成岩体にまだ熱が残っていると考える人もいるが,根拠は明確でない.地表ではまったく気配のない状態でも,そのすぐ下にはとんでもないものが来ているかもしれない.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (火山と火成岩) ―火山


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