岐阜の地学  資源・温泉  珪藻土  温泉とは

資源・温泉[7] マンガン鉱床
~海洋化学沈殿物~

 
  
【豆知識】

現在の深海底にはマンガンクラストマンガン団塊 (ノジュール) と呼ばれるものがある.大陸物質の風化生成物として,あるいは海底熱水活動によって海水中に供給されたマンガン (Mn) や鉄 (Fe) が最終的に酸化物として海底に沈殿した黒色の固まりであり,露岩地帯にはクラストを,堆積物表面には団塊をそれぞれ形成する.これらはMnやFeばかりでなくニッケル (Ni) やコバルト (Co) なども含まれることから,将来の有望な海洋鉱物資源として注目され,その分布や埋蔵量などの探査に各国がしのぎを削っている.また,これらの形成過程の解明はまだ十分にすすめられているわけではないが,深海堆積物が数mm/1000年のオーダーで堆積するのに対して,これらは数mm~数cm/100万年のオーダーといったきわめて遅い速度で長期間をかけて形成されることから,海洋環境の変遷を記録しているはずであり,その指標としての役割が注目されている.
過去の海洋,とりわけ深海底においても現在と同様な作用が働いていたことは容易に想像がつく.美濃帯堆積岩類チャートは古生代の石炭紀から中生代のジュラ紀にかけての時代の深海底堆積物であり,現在のマンガンクラストやマンガン団塊にあたるものがともなわれていて不思議はない.実際に,日本ラインに分布するチャートにともなわれる泥岩中にマンガン団塊が含まれており,その中から放散虫化石もみつかっている.美濃加茂市から武儀郡,本巣郡へかけての地域には,美濃帯堆積岩類のチャート中に層状~レンズ状あるいは塊状にマンガン鉱床が多数見つかっており,100以上もおよぶ小規模なマンガン鉱山があった.根尾村の鶴巻鉱山などは1950~60年代に盛んに採鉱されたが,現在ではそれらのすべてが閉山されている.

【関連項目】 岩石・鉱物[7] 美濃帯堆積岩類

【キーワード】 海洋環境指標,海洋鉱物資源,チャート,マンガンクラスト,マンガン鉱山,マンガン鉱床,マンガン団塊,マンガン・鉄酸化物,美濃帯堆積岩類

【関連文献】
臼井 朗 (1995) 海底マンガン鉱床の研究―その現状と展望―.地質ニュース,493号,30–41.
臼井 朗 (1998) マンガンクラスト,マンガン団塊に海洋環境の変遷が記録されているか? .地質ニュース,529号,21–30.

【余談】
地球上の水の97%は海水であり,いろいろなものを溶かしこんでいる.おもに塩素,珪酸,ナトリウム,マグネシウム,カルシウム,カリウムなどとして約3.5%の塩分を含み,これらは基本的には大陸から運ばれたものである.その中で生命が誕生し,やがて陸上にあがっていった.そして人間という高等哺乳動物まで進化していった.しかし,人間は母親の胎内で羊水というほぼ海水に近い液体の中で育まれている.

『学習テーマ』
地下資源


岐阜の地学  資源・温泉  珪藻土  温泉とは

ホーム岐阜の地学・よもやま話 copyright © Yoshimitsu Koido 2001–2002.
製作・著作: 小井土 由光 (email), ページ作成: 江川 直 (email).