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岩石・鉱物[9] 傘岩
~風化の造形~

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【豆知識】

東濃地方に分布する花崗岩類は風化して広くマサ化している.しかし,マサ化が分布域のどこでも進んでいるわけではない.東濃地方の代表的な景勝地である恵那峡の両岸にみられる奇岩や巨岩は,木曽川によって苗木花崗岩が深く削りこまれたことで表われた硬固な岩石からなる.恵那峡北岸地域にあたる蛭川村にある砕石場でみても,地表面に近いところではマサ化した層 (これを風化殻と呼ぶ) を1mほどともなっているが,その下位にはかなり新鮮な花崗岩があり,この地域では花崗岩体の天井部を露出させていることを考えると,マサ化がそれほど深部まで達していないとみてよい.それは,地表部でのマサ化がどこでも均等に進行しているわけではなく,場所によって硬固な岩盤を地表に残していることからもいえよう.そうした不均等なマサ化の結果として形成されたものが傘岩である.
傘岩は恵那市の恵那峡公園の中にあり,高さ約4.3m,頂部の周囲が約10.2m,細くくびれた部分の周囲が約2.3m,基部の周囲が約5.1mという大きさで,扇子を半分広げたような形をして立っている.素材はもちろんすべて苗木花崗岩であり,風化の進行具合が異なるのに応じて浸食されていく程度も異なったことによりできあがったものである.その見事な形もさることながら,岩石の風化作用を示す適切な標本として国の天然記念物に指定されている.なお,中津川市街地の桃山公園にある夫婦岩も苗木花崗岩が同じような風化・浸食過程を経て硬固な部分だけが残されたものである.

【関連項目】 地形[3] 東濃地方
岩石・鉱物[2] 苗木・土岐花崗岩
岩石・鉱物[13] 苗木ペグマタイト

【キーワード】 恵那峡,傘岩,天然記念物,苗木花崗岩,風化殻,マサ化,夫婦岩

【関連文献】 なし

【余談】
恵那峡は,1924年 (大正13年) に日本で最初のダム式発電所として設けられた大井ダムにより木曽川が堰きとめられて生まれた人造湖を利用している.水が貯まっていても流れていても,そこに硬固な岩石がからむと絶好の景勝地となるようである.滝,峡谷などが典型であろう.鍾乳洞もその部類に属するかもしれない.なぜこれほどまでに無機質なものに人間は何かを感じるのであろうか.それでいて風化していった (腐っていった) 残りものにも何かを感じるようである.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (地層と大地の歴史) ―風化


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