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断層[5] 水平ずれ活断層
~左と右~

 
 
  
【豆知識】

断層がずれる方向は垂直成分と水平成分にわけて考える.水平成分が垂直成分を上回る場合に水平ずれ断層といい,逆の場合を垂直ずれ断層と呼ぶ.水平ずれ断層は,断層線を境にして向い側が左 (右) にずれているものを左 (右) ずれ断層と呼ぶ.一見するとどちらも同じにみえるが,断層の反対側で同じことをしてみても同じ結果となり,左ずれと右ずれは明瞭に区別できる.
岐阜県には日本を代表する活断層が多く分布する.それらのうち北西–南東方向に延びる根尾谷断層阿寺断層や北東–南西方向に延びる跡津川断層は,いずれも延長80~100kmにも及ぶ長大な断層であると同時に,水平ずれ断層として特徴づけられる.注意しなければならないことは,これらの断層は決して1本の断層線だけで構成されているのではなく,長くても数km程度の断層が複数集まって平行あるいは雁行状に並んで断層群を構成し,全体として1本の断層が走っているようにみえていることである.このため個々の断層線と区別するために○○断層系という用語を用いることもあり,根尾谷断層系と阿寺断層系は左ずれ断層,跡津川断層系は右ずれ断層である.阿寺断層系を例にみると,最大値として水平左ずれ成分が8~10km,垂直成分が800mほどの変位量を示す.この水平成分は河川の屈曲量からも推量できるが,垂直成分も含めて正確には断層の両側に分布する">濃飛流紋岩内部の火山岩層の層序区分とそれらの分布から読み取れるものである.こうした変位量は断層系全体をみた場合にあてはまることであり,いろいろな時期に形成されたいろいろな変位を示す断層を全体としてみると水平左ずれ断層系となるのである.

【関連項目】 断層[4] 岐阜県の活断層

【キーワード】 阿寺断層,跡津川断層,活断層,垂直ずれ断層,水平ずれ断層,断層系,根尾谷断層,濃飛流紋岩,左ずれ断層,右ずれ断層

【関連文献】
小井土由光・佐々木嘉三 (1995) 岐阜県の活断層―活断層図と解説―.岐阜県,20P.
濃飛流紋岩団体研究グループ (1976) 濃飛岩体西部の流紋岩類―とくに陥没運動と火山活動について.地球科学,30,193–205.

【余談】
水平ずれ断層は図に描けば1本の線であるが,実際はそのようになっておらず,その線には幅がある.濃尾地震の際に水平ずれ断層を生じた根尾村中地区では,現在でもお茶の木が7mほどの左ずれをみごとに示して並んでいる様子が保存されている.そこではその間をつなぐように断層線の上にもお茶の木が並んでいる.決して断層線はナイフで切ったような1本の線では示せない.

『学習テーマ』
小学6年「土地のつくりと変化 (地震) ―断層
中学1年「大地の変化 (地震) ―断層


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