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断層[6] 阿寺断層
~坂の町~

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【豆知識】

岐阜県を代表する活断層の1つである阿寺断層は,中津川市神坂(みさか)付近から,坂下町,福岡町,付知町,加子母村,下呂町を経て,萩原町北部の山之口付近へ至る全長約80kmにも及ぶ長大な断層である.全体として北西–南東方向に延び,水平左ずれ断層として特徴づけられる.断層の中心部にあたる加子母村付近では幅2kmほどの断層帯を形成し,その中に複数の断層が並走している.下呂町付近から北では,萩原町方面へ向かう断層群と馬瀬村方面へ向かう断層群に枝分かれしていくが,いずれも水平左ずれ断層の要素が薄まり,垂直ずれ断層の要素が強くなる.付知町付近より南東側では並走する断層の数も少なくなり,直線的に延びる断層が直線状の谷や直線的な連なる地形鞍部など明瞭な断層地形を作っている.
坂下町坂下はJR中央線で長野方面へ向かうと岐阜県最後となる駅を中心に広がった町である.その坂下駅を過ぎると,駅のある平坦面に対して立ちはだかるように高さ約10mほどの壁があり,そこをトンネルで抜けるようになっている.この壁が阿寺断層の断層崖である.付知町方面から川上川沿いにまっすぐ南東へ延びてきた阿寺断層は坂下町に入り,坂下駅の脇で鉄道線路を横切り,そのまま壁の比高を少なくしながら木曽川まで達し,そこで壁がなくなっている.こうした壁とは別に,坂下の町には木曽川が作った河岸段丘が4段ほどあり,段丘面と段丘面の間には段丘崖の壁がある.高い位置にある古い段丘面ほど断層による変位量が大きく,最下段の段丘面でも2mほどの断層崖を形成している.これらのことは,ここでの阿寺断層が段丘を形成している間も動いていたこと,それも最下段の段丘面が形成されたごく最近にも動いていたことを示している.さらに言うならば,今後も間違いなく動くことを示している.断層崖と段丘崖が入り交じり,それらを道路が横切ればすべて坂となり,坂下の町はその名のとおり“坂の町”となる.

【関連項目】 断層[4] 岐阜県の活断層
断層[5] 水平ずれ活断層

【キーワード】 阿寺断層,河岸段丘,活断層,水平左ずれ断層,段丘崖,断層崖

【関連文献】
木曽谷第四紀研究グループ (1964) 岐阜県坂下町における阿寺断層による段丘面の転位.第四紀研究,3, 153–166.
Sugimura,A. and Matsuda,T.(1965) Atera fault and its displacement vectors. Geol.Soc.Amer.Bull., 76, 509–522.
佃 栄吉・粟田泰夫・山崎晴雄・杉山雄一・下川浩一・水野清秀 (1993) 2.5万分の1阿寺断層系ストリップマップ.地質調査所.
山田直利・須藤定久・垣見俊弘 (1976) 阿寺断層周辺地域の地質構造図 (5万分の1) .特殊地質図19,地質調査所.

【余談】
いま現在も活断層沿いに微小地震が絶え間なく起こっている.ときどき有感地震になることもあるが,地下でストレスを少しずつでも解放している証拠である.それが大きな地震の後始末としての余震のこともあれば,定常的な運動の一端を表わしていることもある.ところが,阿寺断層ではほとんど微小地震すら起こっていない期間がかなり続いている.ストレスを貯え続けているのであろうか.

『学習テーマ』
小学6年「土地のつくりと変化 (地震) ―断層
中学1年「大地の変化 (地震) ―断層


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