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断層[7] 根尾谷断層
~確認できる最古の地震断層~

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【豆知識】

地震は断層が動く際の振動であり,個々の断層は過去に少なくとも1回の地震を起こしたことになる.活断層は今後も動く可能性が大きいことから地震との関連で関心が高まっている.しかし,活断層の認定はそれほど簡単なことではなく,たとえ活断層として認定されても,具体的に地震活動と結びつけることはさらにむずかしくなる.地震の際に地表で動いたことが確認された活断層を地震断層と呼ぶが,地震断層をともなわずに地下だけに生じた断層で多大な被害をもたらす地震もある.古文書に残されている地震はほぼ例外なく被害を受けた規模の大きな地震であるが,発生した時間や場所 (震央) を正確に特定できるものは皆無に近い.地震断層のことまで記録されたものとなると,もはや古文書ではなく明治時代以降になってしまう.日本で最初に確認された地震断層はたかだか110年前の1891年 (明治24年) に濃尾地震で形成された根尾谷断層である.
根尾谷断層は,可児市帷子(かたびら)付近から関市,高富町,伊自良村,本巣町,根尾村を経て,福井県大野市へ至る全長100kmにも及ぶ大断層である.阿寺断層と同様に,北西–南東方向に延びる水平左ずれ断層であり,南東から梅原断層,根尾谷断層,温見(ぬくみ)断層といった複数の断層が雁行状に並んで断層帯を形成している.これらが濃尾地震の際にいずれも地震断層として動いた.有名な根尾村水鳥(みどり)の約6mの断層崖は全体からみると異常な垂直ずれを行なった場所であり,地震断層としての一般的な変位は水平左ずれであり,最大で約9mに達する.根尾谷断層は濃尾地震の地震断層としてその名が知れわたっているが,それ以前に何度も活動し,とりあえずの最後の活動が濃尾地震であったにすぎない.平均すると数千年単位で活動するといわれていることからすれば,近々また濃尾地震級の巨大地震が起こって大地をずらしていくのであろう.それは数千年後かもしれないし,もっと前かもしれない.

【関連項目】 断層[4] 岐阜県の活断層
断層[5] 水平ずれ活断層
災害[5] 濃尾震災

【キーワード】 梅原断層,活断層,地震,地震断層,水平左ずれ断層,温見断層,根尾谷断層,濃尾地震,水鳥断層崖

【関連文献】
松田時彦 (1974) 1891年濃尾地震の地震断層.地震研究所研究速報,13号,85–126.

【余談】
水鳥の断層崖は,110年前に突如6mの崖を作ってから一度も休むことなく風雨にさらされてきた.形成直後の写真とくらべれば歴然としているが,壁の位置は明らかに後退し,比高も6mはない.これが自然界の当然の営みである.いずれ壁自体がまったくなくなり,なだらかな坂となっていくであろう.そうなってしまったら国の天然記念物はどうなるのであろうか.ひょっとすると,身の回りにある坂もかつては“天然記念物”級の崖であったかもしれない.

『学習テーマ』
小学6年「土地のつくりと変化 (地震) ―地震,断層
中学1年「大地の変化 (地層と大地の歴史) ―地震,断層


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