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災害[5] 濃尾震災
~内陸地震はいつでも起こる~

 
 
  
【豆知識】
濃尾地震は,現在の本巣郡根尾村付近を震源として1891年(明治24年) 10月28日午前6時37分に根尾谷断層が動いたことで発生した地震である.マグニチュード = 8.0とされるわが国最大級の直下型内陸地震であり,この地震によって岐阜県や愛知県を中心に死者7,273名,負傷者17,175名,全壊家屋 142,177軒,山崩れ10,224ヶ所などの大きな被害がもたらされた.とりわけ震源に近い根尾村での被害は大きく,総人口3,346名のうち死者142名 (約4%) ,負傷者290名 (約9%) であり,総戸数715軒のうち倒壊675軒 (約94%) であった.1995年(平成7年)の兵庫県南部地震における死者が6,432名,負傷者43,792名 (消防庁,2000年発表) であったことを参考にしてこれらを110年前の人口過疎地における被害数としてみれば,いかに甚大な被害をもたらした地震であるかがわかる.この地震により根尾村水鳥(みどり)に出現した垂直変位量約6mの水鳥断層崖を,兵庫県南部地震において淡路島の野島断層で出現した垂直変位量約1mと比べると,地震の規模の違いも明らかになる.こうした直下型地震は活断層が動くことでもたらされる地震であり,活動的な活断層では数千年の間隔で動くとされている.こうした活断層が多く分布する岐阜県下では,濃尾地震級の地震がいつ起こっても不思議ではない.ただし,「いつでも起こる」ことが「すぐに起こる」ことではないこともしっかりと頭に入れておく必要がある.自然界のリズムは人間の生活リズムとはまったく異なる間隔で刻まれている.

地震断層観察館は,根尾谷断層の水鳥断層崖をトレンチ発掘した現場を利用して根尾村が1991年(平成3年)に濃尾地震100周年を記念して建設したものである.落差約6mにおよぶ変位の様子を示す地下断面が直接観察できるほか,濃尾地震の被害状況などをわかりやすく紹介している.
地震名濃尾地震兵庫県南部地震
発生年月日1891年10月28日1995年1月17日
発生時間午前6時38分午前5時46分
震央岐阜県本巣郡根尾村兵庫県淡路島
マグニチュード8.07.2
被害数おもに理科年表による消防庁 (2000年12月)
死者7273名6432名
行方不明者3名
負傷者17,175名43,792名
全壊家屋142,177棟104,906棟
半壊家屋80,324棟144,274棟

【関連項目】 断層[7] 根尾谷断層

【キーワード】 活断層,地震断層観察館,直下型内陸地震,根尾谷断層,濃尾地震,被害数,兵庫県南部地震,水鳥断層崖

【関連文献】
村松郁栄 (1976) 根尾谷断層と濃尾地震.地質学論集,12号,117–127.

【余談】
「災害は忘れたころにやってくる」と言ったのは寺田寅彦である.感覚的な印象を語ったのか,何かの客観的な根拠があって語ったのか,その真意はわからないが,人間が記憶にとどめておける期間と災害が起きる間隔に大きなずれがあることを言い表しており,かなり真実味をもった言葉である.濃尾震災から110年,忘れたどころではなく,知らないことになってしまった.しかし,この程度の時間間隔は自然としてはほぼ一瞬にあたる.

『学習テーマ』
小学6年「土地のつくりと変化 (地震) ―地震
中学1年「大地の変化 (地震) ―地震,断層
災害 (震災)


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