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断層[12] 跡津川断層
~谷の向きはみな同じ~

 
 
  
【豆知識】

飛騨地方には北東–南西方向に水平右ずれ断層が平行してたくさん走っている.その多くが活断層であるが,すべてが活動度の高い活断層というわけではない.規模や活動度からみて第一級の活断層と考えてよいのは跡津川断層牛首断層である.活断層の多くが断層線にそって谷を刻んでいるため,高山周辺から県北端部までの間には北東–南西方向に刻まれた谷が多くみられ,跡津川断層に代表させてそれらを“跡津川方向”と呼んでもすぐに理解できるほど一般的な谷の方向になっている.位山(くらいやま)分水嶺江名子(えなご)断層宮峠断層も跡津川方向の断層である.
跡津川断層は,白川村荻町の東方にある天生(あもう)峠付近から北東へ向かって,河合村,宮川村,神岡町を抜け富山県南東縁部の有峰湖付近まで全長60km以上にわたって続く長大な断層である.1本の断層が連続しているわけではないが,阿寺断層根尾谷断層にくらべて少ない断層線で結ばれており,宮川や高原川にみられる明瞭な右ずれの屈曲,各所に断層露頭や低断層崖などの断層地形が残されている.1982年 (昭和57年) に断層のほぼ中央部にあたる宮川村野首(のくび)地区で大規模な掘削調査が行われ,この断層がおおよそ1000~3000年の周期で動いており,甚大な被害をもたらした1858年 (安政5年) の飛越地震もこの断層が動いたことで起こった地震であることなどが明らかにされている.現在でも活発に微小地震が起こっており,まぎれもない活断層であることを示している.
牛首断層は,跡津川断層のすぐ北西側を約8kmほどの間隔をあけてほぼ平行に延びる.白川村荻町の北方にある牛首谷から北東へ向かって富山県境ぞいに走り,富山県大山町へ抜ける全長約50kmにおよぶ断層である.その全体が活動度の高い活断層ではないが,明確な河川の屈曲や低断層崖,断層露頭が各所でみられる.

【関連項目】 断層[4] 岐阜県の活断層
断層[5] 水平ずれ活断層

【キーワード】 跡津川断層,牛首断層,活断層,掘削調査,水平右ずれ断層,飛越地震,微小地震,

【関連文献】
跡津川断層発掘調査団(1983) 跡津川断層におけるトレンチ掘削調査 (速報) .月刊地球,5, 335–340.

【余談】
中央高速道の恵那山トンネルは阿寺断層の南東端付近を横切り,多くの断層破砕帯にあたり,かなりの難工事を強いられた.現在,東海北陸自動車道の飛騨トンネルが跡津川断層の南西端付近で掘削されている.詳しい状況はわからないが,やはり最新の掘削機械が使えない状態が続いているようである.次は根尾谷断層の北西端であろうか.それにしてもそうした場所にトンネルを通さなければならない現実が岐阜県にはある.

『学習テーマ』
小学6年「土地のつくりと変化 (地震) ―断層
中学1年「大地の変化 (地震) ―断層


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