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景勝地[1] 付知峡
~渓谷美と森林保全~

 
  
【豆知識】

付知川の流路を木曽川との合流点である中津川市の美恵橋付近から遡ると,福岡町田瀬まで北上し,そこで阿寺断層の谷に入って北西へ向きを変え,付知町倉屋で断層谷から離れて再び北上して阿寺山地の中に入っていく.阿寺山地へ入ると付知川は大きく西股谷と東股谷にわかれ,このあたりから上流域が付知峡である.阿寺山地は阿寺断層によって断層の北東側が500~800mほど上昇した山塊であり,付知峡は阿寺山地の上昇とともに付知川によって深く刻み込まれた谷である.豊富な水量ときわめて清冽な流れをもち,いくつかの滝にも恵まれ,存分に渓谷美を楽しめる場所を作り出している.この渓谷をつくる岩石はすべて濃飛流紋岩溶結凝灰岩からなり,上昇地塊を深くえぐり続けたことでもともと硬固な岩石が新鮮なまま露出しつづけていることも,スケールの大きな渓谷に仕上げている.いくつかある滝のうち,西股谷 (本流) と高樽谷 (支流) との合流点にある高樽の滝は,本流の浸食力が優ったためにできた約40mの落差をもつ豪快な滝である.
付知峡周辺から長野県側の王滝村へかけての地域は,非常に広大な範囲にわたってヒノキの原生林が生い茂る国有林地帯になっている.伊勢神宮備林という宗教的な背景もあるが,江戸時代からの厳しい保護政策のもとにおかれてきた結果であり,森林の保護が並大抵の努力では果たせないことを教えてくれる.それが山地の環境保全や防災の観点から重要な役割を果たしてきたことはいうまでもない.付知峡もかなり奥まで足を運ばないと本当のヒノキの原生林に出会えなくなっている現実を,深刻に考えるべきであろう.渓谷美と森林保全は裏腹の関係にある.

【関連項目】 岩石・鉱物[4] 濃飛流紋岩
断層[6] 阿寺断層

【キーワード】 阿寺山地,阿寺断層,森林保護,高樽の滝,付知川,付知峡,濃飛流紋岩,ヒノキ原生林,溶結凝灰岩

【関連文献】
山田直利・河田清雄・諸橋 毅 (1971) 火砕流堆積物としての濃飛流紋岩.地球科学,25,52–88.

【余談】
阿寺山地は,阿寺断層谷に面した南西斜面にあたる岐阜県側で急斜面をなし,長野県側ではかなり平坦な台地状の地形になる.これは阿寺断層により上昇した山塊であることを物語っている.それだけ岐阜県側の谷は短くて深い.その急傾斜の深い谷をのぼりつめて県境の尾根にでると,嘘のようになだらかな地形に変わる.そしてその向こうに御嶽山の威容が目に飛び込んでくる.

『学習テーマ』
自然保護


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