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景勝地[2] 飛水峡
~濁流のつくった奇勝~

 
 
  
【豆知識】

七宗町上麻生の飛騨川河床には,日本最古の岩石を含む上麻生礫岩が分布する.それより上流は飛水峡(ひすいきょう)と呼ばれ,白川町白川口までの約12kmにわたり深くえぐられた峡谷がつづく.この峡谷はほとんど美濃帯堆積岩類を構成するチャートと砂岩からできており,国道41号線やJR高山線の位置からはそれらがはるか下の谷底に見え隠れしている.ここは,飛騨川が側方へ川幅を広げるのではなく,下方へ削り込むことで形成された景観である.水量が少ない時は谷底にわずかにみえる水面であるが,水量が増えると岩盤を覆い隠すまで水位が上がり,轟音を響かせながら濁流が流れ下ることになる.この濁流によって河床や河岸の岩盤に作り出された円形の穴が甌穴 (ポットホール) である.
甌穴は,河川によって運ばれてきた礫が河床などの岩盤表面にある割れ目などにひっかかり,流速の早い濁流により渦巻運動をおこしてそこに穴をあけることで作られる.したがって,河床の岩盤が堅ければこの場所に限らず各所でみられるものである.飛水峡では,狭い峡谷の中を勢いよく流れる水と,薄い板を束ねたような縞模様をつくる層状チャートの硬い岩盤が多くの甌穴を集中して作り出したと考えられる.とりわけJR高山線の上麻生駅近くにある上麻生橋から上流の約2kmの間はロックガーデンと呼ばれ,径1m以下の1000個以上にもおよぶ甌穴群がチャートの岩盤上にできており,付近の景観とあわせて国の天然記念物に指定されている.

【関連項目】 景勝地[3] 中山七里
岩石・鉱物[7] 美濃帯堆積岩類

【キーワード】 甌穴.天然記念物,層状チャート,美濃帯堆積岩類,飛水峡

【関連文献】
水谷伸治郎・小井土由光 (1992) 金山地域の地質.地域地質研究報告 (5万分の1地質図幅) ,地質調査所,111P.

【余談】
1968年の飛騨川バス転落事故は,飛水峡の中を走る国道41号線わきの小さな谷で起こった土石流が国道に流れ出たことで発生した災害である.峡谷両側の急斜面では,小さな谷でも途中に土砂をためることで土石流を起こす条件を常に備えている.この事故を契機に始まったとされる雨量による交通規制は,山間部に重要交通路を通さなければならない我が国においては,土石流災害から守る唯一の有効策であろう.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (地層と大地の歴史) ―浸食


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