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景勝地[3] 中山七里
~岩石の違いが景色を変える~

 
 
  
【豆知識】

七宗町上麻生付近から上流の飛騨川は,白川町白川口までの飛水峡(ひすいきょう)にはじまり,飛騨金山までのやや趣きの異なる開けた峡谷,そこから下呂温泉までの中山七里(なかやましちり)と呼ばれる峡谷へとつながっている.飛水峡が美濃帯堆積岩類を刻んでいるのに対して,中山七里は濃飛流紋岩溶結凝灰岩が削られてできた峡谷である.白川口~飛騨金山の区間は美濃帯堆積岩類と濃飛流紋岩の境界地帯を刻んだ峡谷になっている.このように,飛騨川は地質の異なる地域を流れることで,それぞれの地域ごとの特性を反映した景観を作っており,同じ飛騨川でありながら飛水峡と中山七里はあきらかに異なる印象を与えている.
中山七里の名は飛騨領主の金森長近が天正年間 (1580年代) に交通の難所であったこの峡谷の道路改修を行った際に付けられたとされている.ここをつくる濃飛流紋岩の溶結凝灰岩は,飛水峡をおもにつくるチャートと同じぐらい硬い岩石である.ところが,チャートや砂岩などの堆積岩類は基本的に薄い板状の形態をもつ地層として分布しており,それに応じて割れ目の間隔や方向などの傾向が決まってくる.濃飛流紋岩の溶結凝灰岩は大きくみれば板状の形をしているが,その厚さは数百m規模であり,実質的に塊状岩体に近い.火山岩としての柱状節理とそれに関連した多くの割れ目を持っているが,堆積岩類の割れ目に比べると間隔も大きく,その方向も三次元的である.こうした違いがもたらす結果として,中山七里の周囲をつくる峰々は飛水峡に比べて丸みがあり,やわらかい印象を与えており,下呂町保井戸付近の屏風岩や羅漢岩,金山町地蔵野付近の釜ヶ淵や牙岩など,それぞれ特徴のある形をもつ岩が山水画的な景観を作りだしている.

【関連項目】 地形[7] 馬瀬川
岩石・鉱物[4] 濃飛流紋岩
景勝地[2] 飛水峡

【キーワード】 柱状節理,中山七里,濃飛流紋岩,飛騨川,溶結凝灰岩

【関連文献】
脇田浩二・小井土由光 (1994) 下呂地域の地質.地域地質研究報告 (5万分の1地質図幅) ,地質調査所,79P.

【余談】
国道41号線は飛騨川に沿って走るが,白川町白川口を境にして飛騨川との位置関係がみごとに変わる.下流側の飛水峡ではすべて左岸を走り,上流側では下呂町の帯雲橋まで,2ヶ所のそれぞれ数百mを除いてすべて右岸を走る.峡谷を作る岩石が影響しているのか,谷幅の違いが影響しているのか,何か意味があるのであろう.ちなみに右岸・左岸とは川の下流に向かって右・左をいう.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (地層と大地の歴史) ―浸食


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