岐阜の地学  火山  火砕流  濃飛流紋岩の火砕流

火山[11] 溶結凝灰岩
~溶けたようにくっついた石~

 
 
 
  
【豆知識】

噴煙柱の崩壊で作られた火砕流は,大量の火山灰を高速で熱を保ったまま流すために,その火砕流が停止すると内部に含まれていた大量の火山ガスは空中に放出され,堆積物は自重で圧縮されていく.火山灰の正体はマグマから生まれたガラス片であるから,まだ熱い状態のガラス片は堆積物内で圧縮されて容易に塑性変形して引き伸ばされ,互いに密着していく.こうしたプロセスを溶結作用といい,それによってできる堅固な岩石を溶結凝灰岩と呼ぶ.この名称は“火山灰が溶けて固まった岩石”という意味にとられるが,実際にはガラス片が溶けたように引き伸ばされてくっつきあうプロセスで形成される.
溶結凝灰岩は,地表で液体が急冷してできたガラス質の溶岩と似たような見かけを呈する.そのため,形成プロセスはまったく異なるが,かつては溶結凝灰岩がほとんど“○○溶岩”と呼ばれたほどである.溶結作用は温度や自重という条件が整わないと起きないため,1枚の火砕流堆積物でも溶結した部分と溶結しなかった部分ができる.溶結作用の有無は同じ堆積物でもまったく異なる顔つきの岩石を作り出すので,野外ではまったく別の堆積物と判断されるようなことも起こる.例えば,丹生川村周辺に広く分布する丹生川火砕流堆積物上宝火砕流堆積物も溶結部と非溶結部が共存しており,それらはまったく異なる顔つきを示す.地表を流れた火山噴出物でも,溶岩と火砕流堆積物では異なり,火砕流堆積物の中でも溶結部と非溶結部では異なる.それぞれの形成プロセスを理解しておかないと誤った認識をしてしまうことになる.そうしたことが明らかにされてからまだ50年も経っていない.

【関連項目】 火山[9] 火山灰の正体
火山[10] 火砕流

【キーワード】 温度,火砕流,上宝火砕流堆積物,ガラス片,自重,塑性変形,丹生川火砕流堆積物,噴煙柱崩壊,溶結凝灰岩,溶結作用

【関連文献】
小野晃司 (1970) 顕微鏡下の岩石 8, 9, 10―溶結凝灰岩 (その1,その2,その3) .地質ニュース,191,192,193号,40–44,45–49,32–37.

【余談】
火山噴出物は,高温高圧下にあったマグマがほぼ瞬間的に地表という常温常圧下へもたらされたものである.それが空気中だけではなく,水中や氷中へもたらされることもある.そのギャップはすごいものである.元は単純なマグマも火山噴出物になった途端に複雑な顔つきにならざるを得ない宿命にあることを知っておく必要がある.それが,同じマグマが地下でそのまま固結した深成岩と大きく異なる点である.

『学習テーマ』
小学6年「土地のつくりと変化 (火山) ―火山噴出物 (火砕流)
中学1年「大地の変化 (火山と火成岩) ―火山噴出物 (火砕流)


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