岐阜の地学  火山  溶結凝灰岩  田島火道角礫岩

火山[12] 濃飛流紋岩の火砕流
~恐竜を絶滅させたか~

 
 
  
【豆知識】

濃飛流紋岩は岐阜県の1/4ほどにもなる地域を覆っている巨大な火山岩体であり,きわめて大規模な火砕流の噴火をおもな活動様式として形成された岩体である.形成時期が中生代の白亜紀後期であるため,現世の火砕流堆積物でみられるような明瞭な特徴が残っているわけではないが,それらの形成過程はかなり明らかにされている.
濃飛流紋岩を構成する火砕流堆積物は厚さ500~1000mにも達する均質な岩相・岩質を示す溶結凝灰岩の層になっており,それが20枚ほど積み重なっている.1枚の厚さは圧縮された結果であるから,噴火時にはその5~10倍の厚さをもっていたと考えても不思議ではない.噴煙柱の高さはそれをさらに上回っていたはずであり,軽く成層圏にまで達したであろう.雲仙普賢岳の場合とくらべたら問題にもならないほど大規模であり,1回の火砕流噴出でかなり広範囲に長時間にわたって太陽エネルギーが遮断されてしまったり,多量の火山灰が広範囲にわたって地表に繁茂していた植物に付着し,枯らしてしまったことは容易に想像がつく.
恐竜は地質時代の中生代に栄えた爬虫類であり,あまりにも巨大な動物であったこともさることながら,白亜紀末期 (6500万年前ごろ) に突如絶滅してしまった動物としても知られている.絶滅の原因として有力視されているのは隕石衝突による餌不足説であるが,大規模な火砕流の噴出によっても似たようなことは起こるはずである.こうした火山活動は濃飛流紋岩だけでなく,断続的であったとしても恐竜の絶滅時期をはさんで数千万年にわたって地球規模で起こった.恐竜の生存に大きな影響を与えたことは間違いなかろう.

【関連項目】 火山[9] 火山灰の正体
火山[10] 火砕流
火山[11] 溶結凝灰岩
岩石・鉱物[4] 濃飛流紋岩

【キーワード】 隕石衝突説,火砕流堆積物,恐竜,絶滅,濃飛流紋岩,噴煙柱,溶結凝灰岩層

【関連文献】
山下 昇・粕野義雄・糸魚川淳二編 (1988) 日本の地質5「中部地方Ⅱ」.共立出版,310P.
山田直利・河田清雄・諸橋 毅 (1971) 火砕流堆積物としての濃飛流紋岩.地球科学,25,52–88.

【余談】
恐竜が火砕流に絶滅させられたことはともかくとして,恐竜が火砕流から逃げ惑ったことはまんざらあり得ない話ではない.濃飛流紋岩の中から恐竜の丸焦げ化石が出ないかと考えてみるのもおもしろいが,恐竜のほうが危険を察知して本能的に近づかなかったなどと考えてみるのもいかがであろうか.

『学習テーマ』
古い時代の火山活動


岐阜の地学  火山  溶結凝灰岩  田島火道角礫岩

ホーム岐阜の地学・よもやま話 copyright © Yoshimitsu Koido 2001–2002.
製作・著作: 小井土 由光 (email), ページ作成: 江川 直 (email).